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2020 年度 実績報告書

階層的文構造処理のためのブローカ野と小脳の連携仮説の提案とその検証

公募研究

研究領域共創的コミュニケーションのための言語進化学
研究課題/領域番号 20H05014
研究機関東海大学

研究代表者

中谷 裕教  東海大学, 情報通信学部, 講師 (30333868)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード階層的文構造処理 / 小脳 / ブローカ野 / fMRI
研究実績の概要

複雑に階層化された文構造はヒトの言語の特徴である。文構造の処理を行う脳部位としてブローカ野が知られているが、本研究では小脳に着目し、複雑に階層化された文構造を処理するためにはブローカ野と小脳の連携が重要であると提案している。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの頭蓋骨を比較した研究によると、ホモ・サピエンスは小脳の右半球が相対的に大きいことが報告されている。小脳における情報処理の特徴は熟練した処理を無意識的にかつ素早く実行することである。そのため、ある階層レベルの文構造の処理が熟練に伴ってブローカ野から小脳に移れば、ブローカ野は空いた認知資源を使ってさらに複雑な階層構造の処理を学習することができるはずである。そのため、ブローカ野と小脳の学習と熟達に関する連携がヒトの言語における複雑な階層的文構造の起源であると考えた。
上記の仮説に従い、現代人を対象にした脳機能イメージング実験を行い、階層的文構造処理におけるブローカ野と小脳の連携を検証した。日本語の中央埋込み構造の文を被験者に提示し、その文を読んでいる時の脳活動を比較したところ、ブローカ野と小脳Crus-Iは中央埋込みの階層性が高いほど大きな活動を示した。この結果はブローカ野だけでなく小脳Crus-Iが文の階層構造の処理に関与していることを示唆している。さらに安静時の脳活動のデータを使って機能的結合を評価したところ、ブローカ野と小脳Crus-Iは統計的に有意な強度で機能的に結合していた。そのため、ブローカ野と小脳Crus-Iは機能的に連携して文構造の処理を行っていると考えられる。
以上の結果から、階層的文構造処理の際にブローカ野と小脳が連携していることが実証された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた実験を全て終え、研究成果を査読付国際雑誌に投稿中である。

今後の研究の推進方策

小脳は熟練した処理を無意識に実行する部位である。本研究では被験者にとって母国語である日本語を題材にして実験を行ったが、母国語は被験者にとって熟練した言語であるので、言語の熟練と小脳の関係を調べるには外国語を題材にして同様の実験を行う必要がある。今後は英語や他の言語を題材にして研究を行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 階層的文構造処理のためのブローカ野と小脳の連携仮説の提案とその検証2021

    • 著者名/発表者名
      中谷裕教
    • 学会等名
      日本小脳学会
  • [学会発表] Possible cooperation between Broca’s area and cerebellum for processing of hierar- chical sentence structure2021

    • 著者名/発表者名
      Hironori Nakatani
    • 学会等名
      第 44 回日本神経科学大会
  • [学会発表] Possible cerebellar involvement in processing of hierarchical structure in sentence comprehension2021

    • 著者名/発表者名
      Hironori Nakatani
    • 学会等名
      第5回ヒト脳イメージング研究会
  • [学会発表] 言語機能への小脳の関与2021

    • 著者名/発表者名
      中谷裕教
    • 学会等名
      電気学会 C 部門 医用・生体工学合同研究会

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公開日: 2022-12-28  

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