研究実績の概要 |
本研究は、これまで本新学術領域で手薄だったレキシコンの起源を対象としており、階層性と意図共有の融合に貢献した。まず、語彙処理に関して、Oseki & Marantz (2020)では、階層的および線形的な計算モデルを構築し、語彙処理における人間の行動・脳活動データで検証した結果、人間は語を処理している時、文を処理している時と同様、階層性を構築していることを示した。また、語彙獲得に関して、Saldana, Oseki, & Culbertson (2021)では、人工言語学習実験を実施した結果、人間は語彙獲得を可能にしている認知バイアスを持つことを実験的に示し、Shimoda et al. (2021)では、語彙獲得を記号創発の観点から構成論的に検証した。更に、語彙進化に関して、分散形態論の理論的枠組みに基づき、人間の語彙は3つの原型語彙(統語、音声、意味)に分散しており、階層性を生み出す演算Mergeの出現に伴って統合されたとする「語彙分散起源仮説」を理論的に提案した。 以上、レキシコンは意図共有の基盤であり、レキシコンの起源に階層性を生み出す演算Mergeが関与している点で、レキシコンの起源の研究は、階層性と意図共有の融合に貢献した。
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