研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ヒトが言語と音楽を介してコミュニケーションを行う能力に関して、認知神経科学の視点からその脳神経基盤を明らかにすることである。 その目的のため、令和5年度に、申請者はすでに取得済みの心理実験データおよび脳機能データを元に以下の解析を実施し、論文として公開した: 聴覚刺激に関する情動判断が言語によって変化する効果を検証するため、フランスのIRCAM研究所のJean-Julien Aucouturier博士らとともに国際共同研究を実施した。聴覚刺激に人工的に情動情報を加えた刺激を作成し、日本人およびフランス人被験者に判断させた。その結果、母語に加えられた情動情報の方がより正確に判断できることが明らかになった。この結果はPLOS ONE誌に発表された(Nakai et al., PLOS ONE 2023)。 理論言語学の専門家である松本大貴博士と共同研究を実施し、言語理論における統語解析が他の記号システムである数学に対して応用できることを示した。この結果はCognitive Psychology誌に発表された(Matsumoto & Nakai, Cognitive Psychology 2023)。本研究は新学術領域研究「共創言語進化」を通じて生まれた異分野融合研究という特色がある。 さらに、フランスのリヨン神経科学研究センターのJerome Prado博士との国際共同研究により、最新の機械学習技術を利用して言語能力等の個人差や学習の効果を予測する研究に関する総説論文を執筆し、PsyArXivに公開した(Nakai & Prado, PsyArXiv 2023)。この研究は現在国際誌において査読中である。
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