研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
20H05028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊東 剛 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20733075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞接着 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
がん死の原因の約90%は転移であると考えられているが、従来の実験手法では多段階的に進む転移成立の過程を詳細に調べることは難しい。本研究では、転移成立のキーステップであるがん細胞と血管内皮細胞との相互作用に着目し、実験と数理モデルの両面からアプローチする。実験は、独自に作製した細胞表面タンパク質ライブラリーを用いて、表面プラズモン共鳴イメージング法によりタンパク質―がん細胞間の相互作用を網羅的に探索し、がん転移に関与する新規相互作用を同定することを目指す。また、転移成立の過程を数理モデル化してシミュレーションにより予測するというアプローチが有効と考え、がん細胞と血管内皮細胞との相互作用に着目した数理モデルを構築する。偏微分方程式を用いて反応を記述し、転移が成立する条件の予測を目指す。 本年度は、実験に関して、白血病細胞あるいは小細胞肺がん細胞など、浮遊増殖を示すがん細胞を用いて細胞表面タンパク質ライブラリーに対する相互作用について検討を行った。約100種類のタンパク質についての検討を行い、複数のタンパク質に対してがん細胞が相互作用することを見出した。この中には未報告の相互作用が含まれ、がん細胞と血管内皮細胞の新規相互作用の検出に至った。数理モデルに関しては、血管内皮細胞とがん細胞の間に生じる相互作用を表現する方法について、過去の報告を元に様々なモデルを検討し、適切な数理モデルの絞り込みを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表面プラズモン共鳴イメージング法によるタンパク質―がん細胞間相互作用の探索に関しては、実験系が適切に機能し、新規相互作用の検出に至っており、順調に進展している。一方で、相互作用のシミュレーションに関しては、過去の報告を元に数理モデルの絞り込みを行ったが、本研究に適した数理モデルの構築には至っておらず、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
細胞表面タンパク質ライブラリーの分子数をより充実させ、タンパク質―がん細胞間相互作用のスクリーニングを継続する。相互作用分子を同定し、がん転移への関与について検討する。並行して、がん細胞―血管内皮細胞間の相互作用のシミュレーションに適した数理モデルの構築を進める。さらに、分子間相互作用に関する反応速度定数を測定し、数理モデルに反映させることにより、がん細胞が血管内皮細胞へ接着する条件についてシミュレーションする。
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