研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
20H05029
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
後藤 典子 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (10251448)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / シングルセル / リアルタイムイメージング / 不均一性 |
研究実績の概要 |
本研究では乳がん組織のダイバーシティ構築のメカニズムの解明を大きな目的とし、ヒトがん臨床検体由来のスフェロイド、オルガノイド及びPDXモデルを活用する。 まず、NRP1濃縮がん幹細胞様細胞集団を用いた1細胞解析により、増殖しない細胞集団にいる親玉がん幹細胞を同定した(特許出願)。親玉がん幹細胞は、正常乳腺の幹細胞あるいは前駆細胞の性質を持ち、NRP1に加えて膜タンパクFXYD3を組み合わせたダブルポジティブの細胞分画として同定された(論文投稿中)。秋山(A01の計画研究者)、中戸(A03の計画研究者)との共同研究による。 NRP1によって濃縮されるがん幹細胞様細胞が、対称性分裂と非対称性分裂を起こして、がん組織を形成していく過程の1細胞レベルのリアルタイムイメージングをin vitro及びin vivoで行うために、NRP1をコードする遺伝子の3’末端にIRES配列をつけ、CRISPR-Cas9システムによってGFPをつなげた。リアルタイムイメージングを行っている。 がん幹細胞内でMycの活性化によりDNA複製因子MCM10が活性化させて複製ストレスを回避していることを見出し、報告した。 乳がんマウスモデルの解析により、がん超早期の乳腺組織においてFRS2beta分子によってNFkBが活性化し、乳腺組織微小環境を整えることががん発症にクリティカルであることを見出して、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト乳がん由来細胞のスフェロイド培養と接着培養の条件でRNAを取り出してRNAシークエンスを行った結果、がん幹細胞により強くDNA複製ストレスが生じていることがわかった。同時に、転写因子MycとDNA複製開始因子MCM10の発現がスフェロイドで強いことも見出した詳細な解析から、がん幹細胞ではMycの発現が上昇して転写活性が上昇した結果、転写を行うRNAポリメラーゼと複製を行うDNAポリメラーゼが衝突してしまい、DNA複製がうまく行われなくなっていることがわかった。このDNA複製ストレスを回避するため、MCM10の発現が上昇して、本来複製を開始しないdormant originからも複製を開始させてS期を回していることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
論文化したので、次の論文の出版をできるだけ早く行う。
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