研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
20H05035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 健 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10241241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クラスター型プロトカドヘリン / シナプス / シングルセル解析 / FRET解析 / 神経ネットワーク / 神経回路 / ニューロン |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、脳で発現している多様化細胞接着分子群であるクラスター型プロトカドヘリン(cPcdh)遺伝子群を発見し、この遺伝子群が免疫グロブンリンと類似した可変領域と定常領域からなる遺伝子クラスターを構成し、個々の神経細胞ごとに異なるランダムな組み合わせ発現をしていることを明らかにしてきた。本研究では、複雑な神経ネットワークである脳における細胞社会ダイバーシティーを、1神経細胞におけるcPcdh遺伝子群のランダム発現と神経ネットワーク形成を捉え操作することにより明らかにする。本年度は、以下の項目について研究を行った。 1)大脳皮質において、1神経幹細胞由来の神経細胞間のシナプス結合をホールセルパッチクランプ法により解析し、細胞質を吸引してRamDA-seq法を用いてRNAシーケンスを行い、1細胞でのcPcdh遺伝子発現パターンとクローン性・神経ネットワーク性との関係を解析した。 2)cPcdh遺伝子のランダム発現を可視化したβ3-Tomatoノックインマウスを用いて、同一細胞系譜のクローン性ある細胞でのβ3-Tomato発現を解析した。また、生体マウス脳における継続的解析を行い、発達や学習過程でのβ3-Tomato発現の変化について解析することができた。 3)FRETによりcPcdhアイソフォーム接着活性を可視化する技術を開発し、培養海馬神経細胞を用いてシナプス形成過程におけるcPcdhアイソフォーム依存的接着活性の解析を行った。 4)cPcdh遺伝子座にFRET可視化遺伝子をノックインしたマウス、cPcdh接着活性可視化マウスの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)大脳皮質において、1神経幹細胞由来の神経細胞間のシナプス結合をホールセルパッチクランプ法により解析し、細胞質を吸引してRamDA-seq法を用いてRNAシーケンスを行い、1細胞でのcPcdh遺伝子発現パターンとクローン性・神経ネットワーク性との関係を解析することができた。 2)cPcdh遺伝子のランダム発現を可視化したβ3-Tomatoノックインマウスを用いて、生体マウス脳における継続的解析を行い、発達や学習過程でのβ3-Tomato発現の変化について解析することができた。 3)FRETによりcPcdhアイソフォーム接着活性を可視化する技術の開発に成功し、培養海馬神経細胞を用いてシナプス形成過程におけるcPcdhアイソフォーム依存的接着活性の解析を行うことができた。 4)cPcdh遺伝子座にFRET可視化遺伝子をノックインしたマウス、cPcdh接着活性可視化マウスの作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の解析を進めて行く。 1)大脳皮質の1神経幹細胞由来の神経細胞間のシナプス結合をホールセルパッチクランプ法により解析し、1細胞でのcPcdh遺伝子発現パターンとクローン性・神経ネットワーク性との関係を明らかにする。 2)cPcdh遺伝子のランダム発現を可視化したCreノックインマウスを新たに作製し、同一細胞系譜のクローン性ある細胞での発現解析、生体マウス脳における継続的解析を行い、同一アイソフォーム発現細胞の回路形成、発現変化の解析を行う。また、β3-Tomatoノックインマウスを用いて、ヒゲ感覚記憶学習時の神経活動を2光子顕微鏡を用いたin vivo Caイメージング法によりセル・アセンブリの時空間的動態の定量的解析を行い、β3-Tomato発現神経細胞と記憶に関わるセル・アセンブリとの関係を明らかにする。 3)FRETによりcPcdhアイソフォーム接着活性を可視化する技術を、プルキンエ細胞を用いて樹状突起形成時の自己忌避過程におけるcPcdhアイソフォーム依存的接着活性の役割を解析する。
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