研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
20H05041
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川又 理樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (80602549)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | CRISPR-Cas9 / Rainbow / DNA barcode / Lineage tracing / ES細胞 / 肝臓 |
研究実績の概要 |
幹細胞の組織構築原理を解明する上で、4色の蛍光で標識細胞を追跡できるBrainbowシステムが広く利用されてきた。しかし、同じ蛍光を有する個々の細胞(集団)が異なるクローンであるとは言えないため、誤解釈を避けるための1細胞識別標識技術が今後必要となる。そこで本研究では、「ゲノム編集細胞の蛍光+DNAバーコード二重標識技術」を開発し、マウス肝臓において組織ダイバーシティーとの関与が強い細胞代謝、再生、がん発症に関して、これまで見いだすことができなかった新しいメカニズムや起源細胞の同定を目指し研究を実施した。 既存のBrainbowプラスミドにおいて各種蛍光カセットの間にgRNAの標的となるtarget配列を配置させ、gRNA-Cas9の切断によって異なる蛍光が発現するCRISPR-Rainbowプラットフォームを設計した。蛍光カセットの間にtarget配列を1つずつ持つ基本構造では4色の蛍光を均一な割合で発現させることが出来なかったため、試行錯誤(試作品の開発)を重ねることで均一な割合で発現させる最適な数のtarget配列の配置に成功した。一方で、一般的に使用されているCRISPR-Cas9を用いた場合ではこの均一発現パターンは実現でず、我々独自に開発した活性調節型CRISPR-Cas9を用い活性を半分程度に減少させた時にのみ均一発現が可能になり、活性低下技術の有用性が示された。各種蛍光クローンのバーコード(indel)をシークエンス解析したところ、同蛍光色の中でもそれぞれのクローン間で異なるバーコードを有していたことから、ダイバーシティー標識化の達成を確認した。以上より、この1細胞レベルで追跡できる蛍光+Barcode2重標識CRISPR-Rainbowシステムを基盤とし、次年度の研究開発を推進する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標はRainbowの各種蛍光をCRISPR-Cas9の系によって均等に発現させ、更には多様なDNA indel Barcodeを付与することであったが、これが概ね達成できたためこのような評価に至った。
|
今後の研究の推進方策 |
この標識基盤を更に進化させ、ゲノム編集細胞を同時に2重標識させる系をin vitroで構築する。具体的には今回使用したtarget配列の代わりに特定遺伝子のコーディング配列の一部をtarget配列に設定し、CRISPR-Rainbow骨格に組み込い同様のCas9による標識誘導を行う。これらの細胞は標的遺伝子もCas9のターゲットとなりindelによって遺伝子がknockout (KO)されるため、蛍光とbarcodeと共にKO細胞の追跡が可能となる。 一方で、このシステムをin vivoで機能させるためCRISPR-Rainbowのノックインマウスをキメラ法を介して作製する。作製できればこのマウスを用いて肝臓の再生やがん発症時の細胞クローナリティー・起源細胞を同定し、肝臓組織ダイバーシティーの解明を試みる。
|