研究実績の概要 |
組織や臓器の構築原理、がんなどのさまざまな疾患発症のメカニズムの解明に大きな貢献を果たす新規Lineage tracing技術の開発を研究期間内に行った。CRISPR-Cas9によるDNA二本鎖切断とindel変異誘導メカニズムを利用し、3色(mOrange2, EGFP, mKate2)の蛍光カセットが均等に分配され、且つ、同一蛍光細胞でも異なるindel (DNA barcode)により1細胞レベルでの識別が可能になる二重標識技術の開発に成功した。この最適条件の検討には、独自のCas9活性調節技術を使用すると同時に、各蛍光カセットの両サイドに設置したgRNAのターゲット配列ユニットを複数設定し、DNA二本鎖切断による蛍光カセットの切り落としパターンとindel barcode挿入パターンに多様性が生まれるよう工夫した。更に、CAGプロモーター直下に挿入されるindelがプロモーター配列を改変させることによって、蛍光カセットの発現量が変動し、蛍光強弱の勾配が生じることで同色間においてもクローンの識別が可能となった。つまり、このbarcodeを「見える化」できた蛍光標識によって、特殊な蛍光顕微鏡を用いずともin vitroでは20種類以上のクローンの挙動(増殖性・位置関係)の継時解析が可能となり、in vivoにおいてもテラトーマ内の各種3胚葉分化組織と由来クローンとの関係を明確にするなど、幹細胞の組織構築機序の解明等に有効なツールになり得ることを示した。以上、既存のRainbowシステムの大幅な改良となるGradation Rainbow二重標識システムが、マクロ(位置情報)とミクロ(1細胞)の解析を可能とする次世代型のlineage tracing法として有用であることを実証した。
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