研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
20H05053
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
礒村 宜和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00415077)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / ラット / 動的状態 |
研究実績の概要 |
本研究は、げっ歯類が感覚情報を運動情報に変換する過程(感覚-運動変換)を調節する大脳皮質の動態を理解するために、感覚野、運動野、連合野(特に後頭頂連合皮質)の神経細胞群がどのような動的状態のときに感覚-運動変換の成否を分けるのかを解明することを目的としている。そのため、ラットに視覚刺激に応える運動発現が大脳の動的状態に左右されうる行動課題(視覚性二段階反応課題)を遂行させ、大脳皮質各領域における多数の神経細胞のスパイク活動と局所フィールド電位(LFP)活動を同時に計測する。そして弱い視覚刺激で運動反応が発現するときとしないときの各領域のスパイク活動やLFP活動の動的状態を比較評価する。動的状態の評価には神経細胞間の高次相関の動態やデコーディングによる行動予測などの指標を用いる。さらに、行動課題を遂行中に対象領域の神経活動を光遺伝学的に抑制することにより、感覚-運動変換への関与の程度を直接検証する。 初年度(令和2年度)は、上記の行動課題を遂行するラットの大脳皮質におけるスパイク活動とLFP活動を記録する計測実験を実施して実験データを蓄積した。この過程で、感覚-運動変換に関与する神経活動の時間経過や増減変化を客観的に定量化する新規の解析手法「Phase-Scaling analysis」を開発した。この解析法を活用してラットの大脳皮質の各領域における機能的スパイク活動をクラスタ分類して評価したところ、一次視覚野には早い視覚応答を示す感覚関連細胞が多くみられ、後頭頂連合皮質には一次・二次運動野と同様に運動関連細胞や中間型の活動を示す細胞が多くみられた。この解析手法の開発に関する研究成果はJ Neurophysiol誌に論文として発表した(Kawabata 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度(第2年度)の主な研究目標は、視覚性二段階反応課題を遂行するラットの大脳皮質各領域の機能的活動を計測・解析することである。コロナ禍の影響は多少あったものの、計測データの蓄積は進んでおり、新規のスパイク活動の解析手法としてPhase-Scaling analysis法を確立する研究成果も得られた(Kawabata 2020)。従って、当該年度の本研究計画の実施はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点(当該年度末)では、コロナ禍が続いているものの、本研究はおおむね順調に進展しており、今後の研究の推進方策としても、計画の変更を要する問題点は生じておらず、当初の研究計画に沿って着実に実現していく。新規に開発した解析手法を活用して、視覚性二段階反応課題を遂行するラットの大脳皮質各領域におけるマルチニューロン活動を記録する行動・生理実験および理論的解析を継続し、感覚-運動変換を決定する大脳の動的状態の実体を捉えることを目指したい。
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