研究実績の概要 |
本研究は、げっ歯類が感覚情報を運動情報に変換する過程(感覚-運動変換)を調節する大脳皮質の動態を理解するために、頭頂連合野(特に後頭頂皮質PPC)の神経細胞群がどのような動的状態のときに感覚-運動変換の成否を分けるのかを解明することを目的とした。そのため、ラットに視覚刺激に応える運動発現が大脳の動的状態に左右されうる行動課題(視覚性二段階反応課題)を確立し、後頭頂皮質を含む複数の大脳皮質領域における多数の神経細胞のスパイク活動と局所フィールド電位(LFP)活動を同時に計測した。そして弱い視覚刺激で運動反応が発現するときとしないときの後頭頂皮質のスパイク活動やLFP活動の動的状態を比較評価した。この課題デザインにより、神経細胞のスパイク活動が感覚性か運動性かを区別でき、同一強度の感覚刺激に対する運動反応の成と否を分ける大脳の動的状態を比較解析することを可能とした(Kawabata et al. 日本神経科学大会2021)。スパイク解析には、前年度に確立した感覚入力と運動出力のタイミングと発火活動の関連性を客観的に評価するPhase-Scaling解析法も適用した(Kawabata et al. J Neurophysiol 2020)。また、この計測実験の過程で我々が独自に開発した光遺伝学的な記録細胞の投射先同定技術Multi-Lincを改良し導入した(Hamada et al. Comm Biol 2021; Mitani, Kawabata et al. 投稿中)。 その後、神経細胞間の高次相関の動態やデコーディングによる行動予測などの指標により大脳皮質の動的状態を評価する計画であったところ、研究代表者が応募した学術変革領域研究Aの研究領域が採択されたため、本研究課題は重複受給制限のために廃止することとなった。研究協力者:川端政則(東京医科歯科大学・助教)
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