本研究課題では、動機的salience、salience network(SN)、視覚的salience、聴覚的salienceという、既知の4つのsalienceの領域・神経システムという観点から、妄想、幻視、幻聴などの病態を明らかにすることを目的とした。 Resting state magnetic resonance imaging(rsfMRI)に対するindependent component analysis(ICA)を用いて、動機的salienceに関わるMedial temporal lobe network(MTLN)およびBasal ganglia network(BGN)、SN、視覚的salienceに関わるvisual network(VN)、聴覚的salienceに関わるauditory network(AN)、身体感覚に関わるsomatosensory network(SMN)を同定した。また主観的なsalienceを同定できるAberrant salience inventoryを用いて、感覚的なsalienceと認知的なsalienceの強さを測定した。これらの間の関連を検討した結果、感覚的なsalienceとVN-SMN間の結合性とが関連しており、認知的なsalienceとBGNの結合性が関連していることが明らかになった。これらのことからsalienceの領域特異性が示された。 また、rsfMRIのICAと認知機能検査、メタ認知の指標(妄想のconfidence)との間の関連を検討した結果、認知機能とメタ認知機能に関わる機能的ネットワークは概ね異なっており、その中でdefault mode networkは両者に関わる可能性があることが示された。
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