学習時に前初期遺伝子発現を伴う活性化神経細胞は記憶痕跡(エングラム)として機能する。しかしながら、記憶獲得時の神経活動が前初期遺伝子現を誘起する機構は不明であり、さらには、前初期遺伝子発現が記憶痕跡の性質獲得に寄与する分子機構についてもほとんど理解が進んでいない。これらの知見を得るため、本研究では学習時や記憶想起時の神経応答パターンとそれに続く前初期遺伝子発現をマウスを用いて同一個体で連続的に解析する。本年度は昨年度に作成した赤色蛍光の画像取得を可能とする頭部搭載型顕微鏡を改良し、緑色蛍光取得システムと同等の感度まで性能を上げることに成功し、自由行動下のマウス海馬からXCaMP-Rによるカルシウムイメージングを行なえるようになった。このシステム改良により、緑色・赤色用の2つの顕微鏡を交換することにより同一個体から2つの異なるシグナルを検出することが可能となった。また、並行して緑色・赤色蛍光の同時取得を行うことができる頭部搭載型顕微鏡の導入し、同一の個体で脳深部から同時に2つの異なるシグナルの取得も行えるようになった。さらに広域視野ズーム顕微鏡をベースにLEDによる高速励起光切り替えシステムを構築し、大脳表面広域から緑色・赤色蛍光の同時取得を行うことができる光学計測系を構築した。これらにより単一細胞レベルおよび複数領野を含む広域脳領域でおいてカルシウム応答とそれに続く活動依存的遺伝子発現を解析するプラットフォームを確立することができた。また、新たな遺伝子発現レポーターマウスを構築した。
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