研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
20H05074
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 教授 (00402412)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | C. elegans / 酸素 / 温度受容ニューロン / 低温馴化 / 神経回路 |
研究実績の概要 |
神経細胞に入力される複数の情報が、どのように細胞内や回路内で統合されるのかについての基本原理の解析を線虫C. elegansの低温耐性と温度馴化に関わるシンプル神経回路を実験系としておこなった。具体的には、頭部の酸素受容ニューロン(URX)が神経回路上で介在ニューロンを介して頭部の温度受容ニューロン(ADL)に作用し低温馴化を調整する神経回路を近年同定したため(Okahata et al., Science advances, 2019)、この神経回路において温度と酸素という2つの神経情報が、どのように回路上で統合や識別されるかを解析し、脳神経系における情報の統合や識別の基本原理を理解することを目的として研究を進めた。上記の神経回路における酸素と温度の神経情報の統合と、それによる個体のアウトプットの相関性とその分子機構を明らかにするために、以下の解析をすすめた。従来のカルシウムインジケーターを使うと同時に、遺伝子でコードされる最新の膜電位インディケーターも利用した。さらに、飼育温度や温度変化パターンなどを変化させ、酸素受容ニューロンの酸素受容情報伝達系やその下流の介在ニューロンのどのような分子が低温馴化に影響を与えるかを解析したところ、酸素受容ニューロンにおける酸素情報伝達に関わる変異体において、低温馴化の異常が観察された。記憶に関わる転写因子が機能することで、低温馴化の速度が調節される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により予定していたオーストリアに出向いて行う国際共同研究が出来なかったため、予定していた解析の一部が行えなかった。特に、予定していた顕微鏡のステージ上において、温度情報伝達ニューロンの神経活動イメージングを行う際に、酸素濃度を変化させる解析に関して、それに特化した装置がオーストリアの研究所にあるため国際共同研究としてオーストリアにて研究を行う予定であったが、コロナ禍で所属機関において海外出張は認められていなかったため、その研究をおこなうことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
飼育温度や温度変化パターンなどを変化させ、酸素受容ニューロンの酸素受容情報伝達系やその下流の介在ニューロンのどのような分子が低温馴化に影響を与えるかを解析したところ、酸素受容ニューロンにおける酸素情報伝達に関わる変異体で低温馴化の異常が観察されたため、それらの変異体における神経活動の変化を測定したい。記憶に関わる転写因子が機能することで、低温馴化の速度が調節される結果が得られたため、その分子の機能する神経回路の同定を行いたい。
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