公募研究
マウス「内側前頭前野(mPFC)」はヒトの前頭前野同様に、報酬記憶・嫌悪記憶など様々な情動に関する記憶の管理を担う。大脳皮質での情報処理では、神経細胞の集団として精密に制御されなければならないことが示唆されている。しかし実際どのような制御が脳機能の達成に重要かについては、情報論的な概念や仮説が提唱されるにとどまっている場合が多い。研究代表者らはこれまで、2光子神経活動イメージング技術によりこの問題に着手し、さらに光遺伝学的な神経活動操作を同時に行う手法を確立することで、大脳皮質での神経集団による情報コーディング(population coding)の基盤について明らかにしてきた。本研究ではこれらの技術を応用し、擬似自由行動中のマウスにおける神経集団活動の経時的な計測と操作を行うことで、mPFCの神経細胞集団による情動記憶の情報処理基盤を解明することを目的としている。過去の研究で、内側前頭前皮質(mPFC)の一部、前辺縁皮質(PL)では、学習依存的な恐怖反応に伴って、神経活動の変化が報告されている。そこで、深部2光子イメージングを行い、PLを中心とした神経活動観察を進めてきた。遺伝子コード型カルシウムセンサーの利用により、長期的に細胞を標識し、同一の神経細胞群における学習経過を通じた神経発火パターンの変化についてのデータ取得を実現した。本年度はAI・機械学習の専門家との共同研究によりモデルベースの機械学習アルゴリズムを開発した。これにより、多様な情報を並列処理するmPFCから、恐怖記憶をコードする神経細胞集団を選別可能とした。さらに、グラフィカルモデルを利用した神経細胞間の機能的結合を検証する手法を導入した。その結果、学習依存的に起こる神経回路再編の可視化・定量化に成功し、その結果作られる新規脳回路により恐怖記憶がコードされていることが見出された(bioRxiv、2021)。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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bioRxiv
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10.1101/2021.08.31.458461