【高活性光増感色素多層膜の開発】Ru色素多層膜の内部および表面構造を分子レベルで制御しつつ、Pt担持二酸化チタンまたは層状ニオブ酸ナノ粒子表面へ担持させることで、酸化還元可逆な電子伝達剤との反応性を向上させながら、高活性な水素生成光触媒の創出に成功した。470nmの青色光照射下における見かけの量子収率は1%を超え、色素増感光触媒として非常に高活性であることも確認でき、色素多層膜を用いた本手法が従来の単純な色素増感機構を刷新しうる有望性を持つことが明らかとなった。 【水素生成光カソードの開発】多孔質酸化ニッケル電極に対して、Ru色素複層膜を形成後に有機ポリマー触媒を蒸着することで、水素生成光カソードを創出した。このポリマー触媒と色素複層膜からなる新規光カソードは可視光照射下で水素を生成することが確認され、その効率向上には色素多層膜-ポリマー触媒間のエネルギー・電子移動過程の制御が重要であることがわかった。さらに、Ru色素がNiO電極表面から脱離することをポリマー触媒蒸着により効果的に抑制可能なこともわかり、本手法が水素生成光カソードの活性・耐久性向上に資する有望なものであることが実証できた。 【酸素生成光アノードの開発】多孔質二酸化チタン電極に対し、Ru色素と正孔輸送剤となるプルシアンホワイト類縁体やカルバゾール重合体を修飾し、酸素生成触媒となるプルシアンブルー類縁体やRu錯体触媒を結合させたヘテロ接合型光アノードを新たに創出した。これらの光電極は十分な正電位印加下で酸素生成活性を有することが明らかとなり、正孔輸送剤を導入した電極では光照射下における光電流がさらに増強される特性を有することがわかった。これらの結果は酸素生成光アノード構築において、色素-触媒界面に正孔輸送剤を導入することが、活性向上に有望であることを強く示唆するものと考えられる。
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