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2020 年度 実績報告書

ナノ光局在場における高度光―物質変換系の創生

公募研究

研究領域光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製
研究課題/領域番号 20H05084
研究機関北海道大学

研究代表者

南本 大穂  北海道大学, 理学研究院, 助教 (80757279)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード局在表面プラズモン / 光電気化学 / 水素発生
研究実績の概要

本研究においては、金属ナノ構造への可視光照射において形成するナノ光局在場を積極的に利用することによる可視光駆動水素発生系の構築を目標としている。初年度は、近赤外領域に応答を示す金属ナノ構造をワイドバンドギャップp型半導体電極表面に作製することで、可視光駆動水素発生系の構築に取り組んだ。その結果、半導体が本来光応答を示さない近赤外領域の波長の光を照射し、プラズモン構造体中で生成した正孔・電子対の移動方向を制御することで水素発生に起因する光電応答の発現を確認した。さらには作製したプラズモン構造の偏光依存性を利用することで、入射光の偏向方向に依存した光電流応答の変化も観測したことから、ナノ光局在場の空間局在性に依存する水素発生活性についても明らかになった。さらに興味深いことに、本来酸性条件と比較して水素発生反応発生電位がより負電位側にシフトする中性性条件下においても、酸性条件下において観測された光電流値と同程度の活性が発現していることを明らかにし、光局在場において発現する特徴的な界面プロセスが特定の条件において発現するという事実を明らかにした。これら得られた事実を基に、界面における分子挙動の実態を明らかにすべく、同位体分子を用いた速度論的同位体効果の検証にも取り組んだ。得られた結果を電気化学的な電極反応に基づく速度論的な検証を行うことで、ナノ光局在場において界面における水素原子の吸着プロセスが、通常の電極界面と比較して飛躍的に向上しているという可能性が示唆され、本系において特徴的な活性向上と界面プロセスの相関についての知見を得ることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

初年度の研究活動を通じて、当初予定していたナノ光局在場を利用した水素発生系の構築に成功し、光エネルギーの空間局在性やプラズモン共鳴波長に依存した光電気化学特性に関する知見を得ることに成功した。加えて、pH依存性を検証することにより、通常の半導体系の光触媒系や電極反応では見られない溶媒条件に依存した水素発生活性の向上という特徴を明らかにした。本知見は当初想定していた結果を大きく超えた成果として挙げられる。さらには本系のより詳細な理解を目的として同位体分子の導入による同位体効果の検証を行い、光局在場において特異的に発現する界面分子プロセスの実態を明らかにすることを試みた。その結果、本系においては、光局在場において発現する分子選択的な光-物質相互作用が示唆され、それに起因して特徴的な界面プロセスが発現するという可能性が提案された。以上得られた知見は、当初想定した成果を大きく上回る成果と言え、光局在場における光物質変換において新たな学理を提案するものとして位置づけられる。

今後の研究の推進方策

次年度における研究活動では、まずは前年度に得られた同位体効果に関する特徴的な界面プロセスに関して更なる検証を行う。具体的には同位体混合比や溶液条件、入射光波長等の条件に依存して変化する光電流応答を調査する。得られた結果を基に電気化学的速度論手法を用いて特異界面プロセスが発現する因子を明確にする。それと同時に、電気化学分光手法を用いることで、電極界面における水・重水分子の存在比や配向を調査し、得られた結果と光電気化学測定結果との相関を議論することで界面プロセスの全容理解を目指す。以上の点が達成されることで、プロトンが関与する多電子移動反応制御を最適に行うための指針が明らかになる。その後は、本系の汎用性拡大を目指して、可視光誘起による多電子反応制御系の確立を目指す。使用するp型半導体のバンド構造と、プラズモン共鳴波長を制御することで生成する励起電子の絶対電気化学電位を制御し、それにより任意の電気化学還元反応を誘起することに挑戦する。プラズモン共鳴波長に関しては、使用する金属種や形状により制御する。最終的には1電子から8電子までの多電子移動反応を自由に制御した任意二酸化炭素還元技術の確立を目指す。以上のことが達成されることで、光局在場において実現する可視光駆動光物質変換において新たな学理が提案されると期待している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Plasmon-induced Hydrogen Evolution Reaction on p-Type Semiconductor Electrode with Ag Nanodimer Structures2020

    • 著者名/発表者名
      Sato Daiki、Minamimoto Hiro、Murakoshi Kei
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 49 ページ: 806~808

    • DOI

      10.1246/cl.200259

    • 査読あり
  • [学会発表] プラズモニックカソード電極系の構築とその反応特異性評価2021

    • 著者名/発表者名
      南本大穂
    • 学会等名
      プラズモニック化学研究会
  • [学会発表] Plasmonic Hydrogen Evolution at p-Type Semiconductor Electrode2020

    • 著者名/発表者名
      南本大穂、佐藤大樹、村越 敬
    • 学会等名
      PRIME2020
    • 国際学会
  • [学会発表] 可視光誘起プラズモニック水素発生反応の 分子プロセスの検証2020

    • 著者名/発表者名
      南本大穂、佐藤大樹、村越 敬
    • 学会等名
      光化学討論会
  • [学会発表] 局所界面で進行する電気化学反応における電荷移動過程の解明と反応性制御の試み2020

    • 著者名/発表者名
      南本大穂
    • 学会等名
      関西電気化学研究会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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