当研究グループで開発したランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムとの固溶体光触媒(LSTTON)のZスキーム系における酸素生成光触媒としての応用を目指して検討し,昨年度,助触媒未担持の試料はほぼ不活性であるが,酸化コバルトとイリジウムを共担持した試料はコバルトビピリジン錯体を電子伝達剤とするZスキーム型水分解において酸素生成光触媒として機能することを見出した。今年度,電子伝達剤の拡張を狙い,鉄イオンおよびバナジウムイオンを電子伝達剤とするZスキーム型水分解を検討した。酸化コバルトは鉄イオンやバナジウムイオンが必要とする酸性条件下では溶解したため活性は非常に低かった。そこで,酸化コバルトの代わりに耐酸性のある酸素生成のための助触媒である酸化イリジウムの担持を行ったところ,コバルトビピリジン錯体のみならず鉄イオン,バナジウムイオンを電子伝達剤とするZスキーム型水分解で活性を示すことが明らかになった。 ペロブスカイト型酸窒化物を長波長応答型の酸素生成光触媒として利用できるようになったため,Zスキーム系における水素生成光触媒の長波長応答化を検討した。以前,当グループで開発した銅リチウムチタン酸化物を酸素生成光触媒であるバナジン酸ビスマスとコバルトビピリジン錯体を用いたZスキーム型水分解に用いたところ,ロジウムおよび白金を助触媒とした場合では活性がないものの,ルテニウム助触媒を担持した場合にZスキーム型水分解が進行することを確認した。しかしながら,酸素生成光触媒にペロブスカイト型酸窒化物を用いたところZスキーム型水分解は進行しなかった。銅リチウムチタン酸化物とペロブスカイト型酸窒化物では動作可能な溶液中のRed/Ox比が異なることが原因であり,両者を組み合わせたZスキーム型水分解実現のためには更なる改良により電子伝達剤が関与する逆反応の抑制が重要であることが明らかとなった。
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