研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H05086
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大友 征宇 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10213612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光合成 / 電子伝達 / 光電変換 |
研究実績の概要 |
本研究は、天然光合成の初期過程における集光・電荷分離と電子移動間の連係プレイ(Interplay)に関するものである。これらの素機能を担う光捕集複合体LH1、反応中心RC、水溶性電子伝達タンパク質HiPIPと膜内チトクロム(Cyt) bc1を研究対象とし、LH1-RC、HiPIPとCyt bc1からなる光捕集・電荷分離・電子伝達の3機能を併せもつ超分子複合体の共結晶化と構造解析を行い、これらの複合体間において機能調節を司る相互作用の構造基盤の解明を目指す。 本年度は好熱性光合成細菌Thermochromatium (Tch.) tepidum由来でHiPIPの占有率が高い共結晶の作製条件の最適化と構造解析を行ってきた。HiPIPの割合とpHを細かく変化させて調べた結果、最適なHiPIP:LH1-RC量論比が存在することがわかった。この中で比較的高分解能で得られた回折データの解析とともに、HiPIPの構造を導入した共結晶のモデル構築と構造解析を行った。この複合体構造モデルを元に、電子伝達経路の計算を開始し、論文発表の準備にも着手した。一方、Tch. tepidumと近縁種のThiorhodovibrio strain 970由来のLH1-RC複合体の立体構造を低温電子顕微鏡と単粒子解析で決定した。この成果は国際学術誌(Nature Communications 11, 4955; 2020)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度には構造解析が可能な分解能まで与える共結晶が得られ、構造解析を開始した。今年度はHiPIP:LH1-RC複合体のモデル構築と構造解析を行い、その構造に基づいて電子伝達経路の解析を行った。現在これらの成果をまとめる学術論文の発表に目処がついたことから総合的に判断した結果、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
HiPIPとLH1-RCは光合成細菌の中に最も大量に含まれる電子伝達に関与するタンパク質で、それぞれの立体構造はタンパク質の結晶構造解析の中で最も初期に決定された代表的なものである。両タンパク質間における電子移動も古くから研究されてきたが、両者間の直接的な相互作用や電子伝達複合体の存在は証明されていなかった。本研究はこの未解決の課題に挑戦し、最大の関門をすでに突破したと言える。今後これらの成果の公表に向けて取り組み、さらに新しい研究への展開を計っていきたい。
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