研究実績の概要 |
本研究「有機ヒドリド供給能を有するユビキタス金属錯体の開発とCO2光還元システムへの展開」では、生体内における補酵素NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)のNAD+/NADH型レドックス機能を範とした、地球上に多量に存在するアルコールや水を電子源として光エネルギーを化学的に(有機ヒドリド源として)貯蔵可能な新しいユビキタス金属(亜鉛(Zn))錯体を創出することで、光エネルギーによりZn錯体内に貯蔵された有機ヒドリドによる光駆動型CO2還元反応系の構築を目的としている。本年度の研究成果としては、以下の2点が挙げられる。 (1)NAD+モデル配位子であるpbn配位子(pbn = 2-(pyridin-2-yl)benzo[b][1,5]naphthyridine)を有する新規NAD+型Zn錯体([Zn(pbn)2(H2O)]2+)は、様々な脂肪族や芳香族アルコールに対して光酸化能を有することがわかり、反応メカニズムも解明することができた。 (2)NAD+からNADH型錯体への光還元反応(光エネルギーの有機ヒドリドとしての貯蔵反応)を達成すべく新しく設計した新規配位子(bbn = 2-([2,2'-bipyridin]-6-yl)benzo[b][1,5]naphthyridine)を有するZn錯体([Znbbn(AcO)2])の合成に成功し、そのX線結晶構造解析をはじめ、各種分光学・光化学的性質や電気化学的特性および光エネルギーの有機ヒドリド貯蔵反応特性を明らかにすることができた。
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