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2020 年度 実績報告書

酸素発生系マンガンクラスターのスピン転移と中間体構造の解析

公募研究

研究領域光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製
研究課題/領域番号 20H05096
研究機関名古屋大学

研究代表者

三野 広幸  名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (70300902)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードEPR / 酸素発生系 / 光合成 / 光化学系II / マンガンクラスター / EPR
研究実績の概要

光合成酸素発生は光合成系IIタンパク質複合体中のマンガンクラスターで行われる。マンガンクラスターは4つのマンガン(Mn1-4), 5つの酸素(O1-5)とカルシウムから構成されている。Mn1,Mn4とラベルされたマンガン間の結合長が長く全体の分子構造はゆがんでいる。酸素発生反応の過程では5つの中間状態が存在する。S2状態では高スピン状態、低スピン状態の2種類の異性体が存在し、Mn1-Mn4間の酸素の位置によりMn1。Mn4の価数がスイッチし、構造変化をおこすと考えられている。マンガンクラスターの異性体は電子スピン共鳴法(ESR)でのみ検出可能である。 本研究ではマンガンクラスターのS2中間酸化状態に焦点をあて、磁気的解析に基づき分子構造を明らかにすることを目的としている。
研究の過程で新たにg ~ 5をもつ S2中間体が存在することを発見した。これまでS2状態にはg=2と g~4 に,また特殊な条件下ではg=6-10 に信号が確認されていた。g ~ 5信号は数10本からなる対称性の高いおよそ30 G間隔の超微細相互作用分離からなる信号である。超微細相互作用の大きさから4つのマンガン間の相互作用の大きさを定量的に評価した。またg因子の異方性が極めて小さく配位子場の対称性の高い状態を示していた。この状態はS=5/2またはS=7/2の高スピン状態と考えられ、これまで考えられてきた構造とは大きく異なることがわかった。また、g~5状態の形成にはマンガンクラスターを保護する表在性タンパク質が影響していることがわかった。これは植物とシアノバクテリア間のマンガンクラスターの構造的な違いを説明する。S3状態からS2状態への緩和過程においても同様の信号が観測されることから、g=5状態をS2-S3状態の中間的なS2構造と提案してS2異性体の構造モデルを提案した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画になかった新しい信号の解析を進めている。この点では当初の計画上の進展といえる。 ただし、当初計画での実験は持ち越しているため、中間的な評価とした。

今後の研究の推進方策

当初計画に加えg~5信号の解析を進める。ただし、新規性を鑑みg~5信号の解析を優先的に進めてゆく計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Key Laboratory of Photobiology(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Key Laboratory of Photobiology
  • [雑誌論文] Molecular Structure of the S2 State with a g = 5 Signal in the Oxygen Evolving Complex of Photosystem II2020

    • 著者名/発表者名
      Taguchi Shota、Noguchi Takumi、Mino Hiroyuki
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry B

      巻: 124 ページ: 5531~5537

    • DOI

      10.1021/acs.jpcb.0c02913

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Formation of the High-Spin S2 State Related to the Extrinsic Proteins in the Oxygen Evolving Complex of Photosystem II2020

    • 著者名/発表者名
      Taguchi Shota、Shen Liangliang、Han Guangye、Umena Yasufumi、Shen Jian-Ren、Noguchi Takumi、Mino Hiroyuki
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry Letters

      巻: 11 ページ: 8908~8913

    • DOI

      10.1021/acs.jpclett.0c02411

    • 査読あり
  • [学会発表] g~5 EPR 信号をもつ酸素発生系S2中間状態の形成2021

    • 著者名/発表者名
      三野広幸, 田口翔太, Liangliang Shen, Guangye Han, 梅名泰史, 沈建仁, 野口巧
    • 学会等名
      第62回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] g=5 をもつ酸素発生系マンガンクラスターの分子構造2020

    • 著者名/発表者名
      三野 広幸, 田口 翔大, 野口 巧
    • 学会等名
      第58回電子スピンサイエンス学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 光合成酸素発生系におけるg=5 S2状態の分子構造2020

    • 著者名/発表者名
      三野 広幸, 田口 翔大, 野口 巧
    • 学会等名
      第59回生物物理学会年会

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公開日: 2021-12-27  

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