研究実績の概要 |
酸素発生触媒部位をもたない紅色光合成細菌由来の光収穫系(LH1)ー反応中心(RC)複合体(LH1-RC)に対し、酸素発生活性を付与するために、半導体光触媒とのハイブリッド化し、水を電子源とするLH1-RCの光触媒系を構築することを目的とする。そのために、以下のことに取り組んだ。 (1) 半導体光触媒によるシトクロムcの還元反応:LH1-RCに電子輸送するための移動キャリアとなるシトクロムcと半導体光触媒との間での反応を調べた。光照射によりシトクロムcは半導体光触媒(酸化チタン(TiO2), 酸化タングステン (WO3), 硫化カドミウム (CdS), TaON)により還元されることが確かめられた。このことは、固体表面とタンパク質(シトクロムc)との接触により、半導体の伝導体に励起された電子がシトクロムcに移動したことを示している。この還元型シトクロムcは電子キャリアとして機能するので、電荷分離状態のLH1-RCのスペシャルペア(カチオンラジカル)を還元することが可能となるので、目的とする光触媒系の構築において非常に重要な手がかりを得ることができた。 (2) 半導体光触媒からシトクロムcを介したLH1-RCへの電子伝達:半導体光触媒(WO3)/シトクロムc/LH1-RC/ユビキノン0 (UQ0: 電子受容体)系で光触媒反応を調べた。反応の追跡はユビキノンの紫外吸収帯の変化により行った。光照射により還元型ユビキノンの生成が観察された。また、WO3からユビキノンへ直接電子移動が起こる可能性にも示された。
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