研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H05102
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片岡 祐介 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (20725543)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光水素発生 / 人工光合成 / ハイブリッド触媒 |
研究実績の概要 |
本科研費研究では, 申請者らが開発した「均一系システムでは世界最高クラスの光水素発生を示す(超分子)ロジウム二核錯体・四核錯体を酸化チタンなどの酸化物半導体表面に化学修飾した「(超分子)ロジウム二核錯体/酸化物半導体融合型ハイブリッド触媒」を開発し, 不均一系光触媒および(光)カソード電極へと発展させる。さらには、量子化学計算を利用して上記のハイブリッド触媒の光水素発生機構を明らかにすることを目的としている。 本年度の研究において我々は, テレフタル酸(H2BDC)がロジウム二核骨格に配位した[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]を開発した。本錯体は、配位活性なカルボン酸をアンカー機として1つ有しており、酸化物半導体の表面に固定化することが可能であると予想される。開発した[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]は、核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析で同定を行った。また、単結晶X線構造解析の結果から、同ロジウム二核錯体は、パドルホイール型構造を形成している事と配位活性なカルボン酸を1つ分子内に所有していることを確認した。開発した[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]は、酸化チタン(P25)にカルボン酸を介して固定化することができ、緑色のハイブリッド触媒[Rh2(O2CCH3)3(BDC)]@TiO2(P25)を得ることができた。得られたハイブリッド触媒は、赤外吸収スペクトル、紫外可視拡散反射スペクトル、広域X線吸収微細構造で同定を行った。開発したハイブリッド触媒は、光増感剤[Ir(ppy)2(bpy)]PF6 (ppy = 2-フェニルピリジン, bpy = 2,2'-ビピリジン)と犠牲剤(トリエチルアミン)の存在下、可視光照射によって光水素発生を行うことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酢酸ロジウム二核錯体とテレフタル酸との反応により本科研費研究で基軸となる配位活性なカルボン酸をアンカー基として有するHeterolepticなロジウム二核錯体[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]の開発に成功し、ESI-TOF-MS, NMR, 元素分析, IR, Ramanスペクトルによって同定を行うことができた。 また, 同錯体の単結晶を得ることにも成功し、単結晶X線構造解析から分子構造を決定することにも成功している。[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]は、酢酸ロジウム二核錯体と同様に一電子還元を生じ、さらには酢酸をプロトン源として添加することで水素発生に由来する触媒電流を示した。[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]は、酸化チタン(P25)の表面にカルボン酸を介して化学吸着を行い、緑色のハイブリッド触媒[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]@TiO2(P25)を与えた。同触媒は、光増感剤[Ir(ppy)2(bpy)]PF6 (ppy = 2-フェニルピリジン, bpy = 2,2'-ビピリジン)と犠牲剤(トリエチルアミン)を含む光補修システムに分散させ、可視光照射を行うことで極めて高効率な光水素発生を行うことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究では、本年度に開発した[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]を酸化ニッケル(NiO)表面に固定化させたハイブリッド触媒[Rh2(O2CCH3)3(HBDC)]@NiOを開発し、光水素発生反応に応用する。また、ジチオフェンカルボン酸を配位子とするパドルホイール型ロジウム二核錯体の開発を行い、伝導性透明電極(ITO or FTOなど)を使用して電解酸化重合を行うことで電極状にロジウム二核骨格を有する配位子高分子膜を作成する。 得られたロジウム配位高分子膜電極は、水の電気分解反応におけるカソード触媒として応用する。開発したロジウム二核錯体、ハイブリッド触媒、膜電極は, NMR, ESI-TOF-MS, 元素分析, IR, Ramanスペクトル、原子間力顕微鏡(AFM)、X線回折測定などで同定を行う。また、前年度に開発したハイブリッド触媒[ロジウム二核錯体@酸化チタン(P25)]との触媒活性・電気化学特性の比較等も実施する予定である。
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