研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H05108
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小澄 大輔 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 准教授 (70613149)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光合成 / 超高速現象 / エネルギー移動 / 電子コヒーレンス / 極超短光パルス |
研究実績の概要 |
2020年度は、光合成初期反応過程において極限的時間領域で起こる超高速光誘起現象を分子レベルで解明することを目的とした。すなわち、光合成色素タンパク複合体に結合する色素分子とその周辺環境との相互作用を反映する電子・振動コヒーレンスの実時間計測が可能な高感度サブ10フェムト秒コヒーレント分光計測装置を構築し、光合成色素タンパク複合体の計測を行った。また、各種時間分解分光計測をあわせて行うことで、幅広い時間スケールをカバ―し、光合成機能の統一的解明を行った。具体的には(1)可視から近赤外波長域におけるサブ10フェムト秒光パルス発生技術の改良及びそれを用いたコヒーレント分光計測、(2)ピコ秒時間分解発光分光及び100フェムト秒ポンプ・プローブ分光計測を行った。 (1)これまで用いていた中空糸ファイバーパルス圧縮器による近赤外サブ10フェムト秒光パルス発生技術に加えて、非同軸光パラメトリック増幅器と広帯域チャープミラーを使用することで、可視域における波長可変サブ10フェムト秒光パルス発生とそれを利用したコヒーレント分光計測を実現した。 (2)これまで構築した高感度及び室温から液体窒素温度まで可変で測定可能な分光計測装置を用い、シアノバクテリア、紅藻、渦鞭毛藻類由来の光合成アンテナ色素タンパク複合体の光捕集過程を解明した。また、シアノバクテリア、紅藻、緑色硫黄細菌、ヘリオバクテリア由来の電子伝達系におけるエネルギー伝達・電子伝達過程を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていたサブ10フェムト秒光パルス発生及びそれを用いたコヒーレント分光計測装置が完成し、稼働状態となった。また、様々な生物種由来の光合成アンテナ、電子伝達系について、ピコ秒時間分解発光分光及び100フェムト秒ポンプ・プローブ分光計測を行うことで、光合成過程の全容解明に近づいた。
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今後の研究の推進方策 |
コヒーレント分光計測では、これまで確立した極超短光パルス発生手法をさらに改良し、パルス幅を5フェムト秒程度まで圧縮し、時間分解能の向上を目指す。ピコ秒時間分解発光分光及び100フェムト秒ポンプ・プローブ分光計測では現在、室温から液体窒素温度まで可変で測定を行うことができるので、新学術領域内研究者に測定装置を共有し、新たな融合研究を目指す。
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