• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

新規クロロフィルを用いた生体人工光合成

公募研究

研究領域光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製
研究課題/領域番号 20H05114
研究機関東京理科大学

研究代表者

鞆 達也  東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂, 教授 (60300886)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード光合成 / 光化学系 / クロロフィル
研究実績の概要

陸上植物、藻類、シアノバクテリアが行う光合成光化学反応は可視光をエネルギー源、水分子を電子供与体として進行する。この中で光捕集、エネルギー移動、電荷分離を担うのはクロロフィル分子である。一般的なクロロフィルはクロロフィルa, bであり可視域に吸収極大をもつが、それより低エネルギー側に吸収極大をもつクロロフィル、クロロフィル d, fの存在が明らかとなり、近年、注目されてきた。ここではこれらを新規クロロフィルと呼ぶことにする。この新規クロロフィルを人工光合成等の光化学反応に用いることにより、より低エネルギーの光をエネルギー変換に利用できることになる。そのためには、新規クロロフィルのエネルギー変換の役割や、それを用いた生体人工光合成装置の開発が必要となる。我々は前年までにクロロフィルfを結合した光化学系Iの構造をクライオ電子顕微鏡による構造解析により明らかにした。この結果、エネルギー的に不利と思われる、エネルギー勾配に逆らった励起エネルギー移動がクロロフィルの配置を工夫することにより実現していることを明らかにした。現在はクロロフィルfを結合した水分解反応を担う光化学系IIの研究を同様に進めている。また、電子伝導性の高い炭素材料と光化学系と組合わせることにより、人工的に制御の容易な光エネルギー変換系を作製することができる。現在、光化学系Iとグラフェンおよび光化学系IIを組合わせることにより、新たな生体人工光合成の開発を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

クロロフィルfをもつシアノバクテリアから、光化学系II複合体の単離精製系を確立した。このため、種々の分光解析が可能になり、エネルギー移動について測定を行った。本標品を用いて詳細な分光解析を行うことにより、新規クロロフィルの局在部位とエネルギー順位の全貌解明が期待できる。
光化学系を用いた、炭素材料との組み合わせによる光エネルギー変換系の構築を行った。エネルギー変換の効率をファインチューニングすることにより、還元力の創生が期待できる。

今後の研究の推進方策

クロロフィルfは光環境に応じて発現する。このため、同じシアノバクテリアからクロロフィルfをもつものともたないものを精製することにより、あたかもアミノ酸の部位特異的置換のようにクロロフィル置換を用いて光化学系の機能を知ることができる。この標品を用いて、分光解析、構造解析を行っていく。解析には大量の純化された試料が必要となる場合があるので、培養方法の検討、単離精製方法の検討を行い収率の改善を進めていく。本研究は世界中で競争的に行われていることから、スピード感をもって着実に進めていく。
また、新たな炭素材料が世界中で競争的に合成され、報告されている。この炭素材料は可視域に発光することも可能である。この炭素材料と従来試料と併せて用いることにより、エネルギー変換反応の増強を進めて行く。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Bioprocesses of hydrogen production by cyanobacteria cells and possible ways to increase their productivity2020

    • 著者名/発表者名
      Asemgul K. Sadvakasova, Bekzhan D. Kossalbayev, Bolatkhan K. Zayadan, Kenzhegul Bolatkhan, Saleh Alwasel, Mohammad Mahdi Najafpour, Tatsuya Tomo, Suleyman I. Allakhverdiev
    • 雑誌名

      RENEWABLE & SUSTAINABLE ENERGY REVIEWS

      巻: 133 ページ: 110064

    • DOI

      10.1016/j.rser.2020.110054

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Photoelectric Conversion System Composed of Gene-Recombined Photosystem I and Platinum Nanoparticle Nanosheet2020

    • 著者名/発表者名
      Wenchao Zhu, Raphaem, l Salles, Mariko Miyachi, Yoshinori Yamanoi, Tatsuya Tomo, Hiromi Takahashi, Hiroshi Nishihara
    • 雑誌名

      LANGMUIR

      巻: 36 ページ: 6429-6435

    • DOI

      10.1021/acs.langmuir.0c00647

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A gold nanoparticle conjugate with photosystem I and photosystem II for development of a biohybrid water-splitting photocatalyst2020

    • 著者名/発表者名
      Kousuke Kawahara, Natsuko Inoue-Kahino, Keisuke Namie, Yuki Kato, Tatsuya Tomo, Yutaka Shibata, Yasuhiro Kashino, Takumi Noguchi
    • 雑誌名

      Biomedical Spectroscopy and Imaging

      巻: 9 ページ: 73-81

    • DOI

      10.3233/BSI-200200

    • 査読あり
  • [学会発表] 光化学系Iの長波長型クロロフィルについて2021

    • 著者名/発表者名
      鞆 達也
    • 学会等名
      光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光-物質変換系の創製第3回公開シンポジウム
  • [学会発表] ホスファチジルグリセロール(PG714)と相互作用するD1-R140 およびD2-T231の部位特異的置換が光化学系II 複合体の電子伝達反応に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      篠田 稔行,菅原 佑斗,遠藤 嘉一郎,鞆 達也,沈 建仁,神保 晴彦,和田 元,水澤 直樹
    • 学会等名
      第62回日本植物生理理学会年会
  • [学会発表] 時間分解蛍光分光法によるアカリオクロリスの光質応答に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      王 哲,植野 嘉文,横野 牧生,豊福 玲於奈,鞆 達也,秋本 誠志
    • 学会等名
      第62回日本植物生理理学会年会
  • [学会発表] ホスファチジルグリセロール(PG714)と相互作用するD1-R140 およびD2-T231の部位特異的置換が光合成の光強度依存性に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      菅原 佑斗,篠田 稔行,遠藤 嘉一郎,鞆 達也,沈 建仁,神保 晴彦,和田 元,水澤 直樹
    • 学会等名
      第62回日本植物生理理学会年会
  • [学会発表] Synecosystis sp. PCC6803 における分子状水素と活性酸素種の関係2021

    • 著者名/発表者名
      浅野 佑太,太田 尚孝,鞆 達也
    • 学会等名
      第62回日本植物生理理学会年会
  • [学会発表] Structural of photosystem I complex with chlorophyll f2020

    • 著者名/発表者名
      Toshiyuki Shinoda, Koji Kato, Ryo Nagao, Seiji Akimoto, Jian-Ren Shen, Fusamichi Akita, Naoyuki Miyazaki, Tatsuya Tomo
    • 学会等名
      日本生物物理学会第58回年会
  • [学会発表] Connecting the spectral properties to the structure of photosystem I containing Chlorophyll-f2020

    • 著者名/発表者名
      Rin Taniguchi, Yutaka Shibata, Toshiyuki Shinoda, Tatsuya Tomo, Shen Ye
    • 学会等名
      日本生物物理学会第58回年会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi