研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H05120
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
池田 茂 甲南大学, 理工学部, 教授 (40312417)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 半導体光電極 / 人工光合成 / 水分解水素発生 / 化合物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究では、応募者がこれまでの研究で実施してきたp型化合物半導体多結晶・単結晶インゴット作製に関する知見と技術を活用して、キャリア特性と電子エネルギー構造を制御した薄片状半導体を合成し、それらを金属、無機化合物、有機化合物、錯体、生体触媒材料などの機能性素材とを複合化させることによって、それぞれの特徴を最大限に活用した新規な水分解および二酸化炭素還元の反応系を構築することを目的とする。本年度は、これまでに合成を実現したCuGaSe2単結晶インゴットについて、Seアニーリングによるポスト処理を施すことでキャリア濃度が制御されたp型単結晶となることを見出し、これを剥片化、表裏の非対称修飾(裏面電極の形成および表面pn接合ならびに触媒担持)を施すことによって水分解水素発生光電極となることを実証した。さらに、単結晶インゴットの切り出しの方向を変えることで、露出面の方位が異なるCuGaSe2単結晶光電極を得ることに成功した。表面の仕事関数および表面組成の分析から、得られた露出面の方位が異なるCuGaSe2単結晶では、露出面によってCu不足の異相(CuGa3Se5)の表面に自発的に形成されること、さらにはそれによってp型電極としての光電気化学特性が向上することを見出した。また、オーバーオールでの水分解および水を電子源とするCO2還元の実現のため、上記のCuGaSe2単結晶p型光電極に加えて、水の酸化側の半導体材料の開発や高機能化に関する研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、単結晶である特性を活かしてその露出面の物性と光電極特性の相関を研究終了まで検証していくことを想定していたが、今年度の検討で、(少なくとも水分解水素発生においては)CuGaSe2単結晶表面へのCu不足相(CuGa3Se5)の形成が電極特性を決定するきわめて重要な物性であることが見出された。当初は予測していない結果であったが、実際の高機能光電極として利用される多結晶薄膜の高機能化の指針としてすぐにフィードバックできるユニークな成果であったと認識している。また、対外発表の難しい状況ではあったが、当該研究結果について迅速に発表できたことも、当初の期待以上の進展であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
CuGaSe2単結晶における光電極特性の露出面依存性の成果を踏まえて、これを多結晶薄膜系にフィードバックする。水の完全分解系および水を電子源とするCO2還元系の実証のため、水の酸化側に用いる化合物半導体および半導体光電極についての研究を並行して進める。
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