本研究では、応募者がこれまでの研究で実施してきたp型化合物半導体多結晶・単結晶インゴット作製に関する知見と技術を活用して、キャリア特性と電子エネルギー構造を制御した薄片状半導体を合成し、それらを金属、無機化合物、有機化合物、錯体、生体触媒材料などの機能性素材とを複合化させることによって、それぞれの特徴を最大限に活用した新規な水分解および二酸化炭素還元の反応系を構築することを目的とする。前年度までに、単結晶インゴットの切り出しの方向を変えることで、露出面の方位が異なるCuGaSe2単結晶光電極を得ることに成功し、これらの資料の表面の仕事関数および表面組成の分析から、得られた露出面の方位が異なるCuGaSe2単結晶では、露出面によってCu不足の異相(CuGa3Se5)の表面に自発的に形成されること、さらにはそれによってp型電極としての光電気化学特性が向上することを見出した。これらの結果を踏まえて、CuGaSe2多結晶薄膜にCu不足相を意図的に導入した結果、CuGaSe2系ではこれまでに得られていない最高の水分解水素発生効率を実現するとともに、もっとも正側(低過電圧側)での水素発生を達成した。また、更なる光電気化学特性向上のため、1価アルカリカチオンの添加効果を探索し、水素発生特性の更なる向上を実現した。さらに、このCuGaSe2多結晶薄膜水素発生電極と組み合わせるための酸素発生系として、BiVO4光触媒の基礎物性評価と真空成膜による薄膜電極作製に関する研究を並行して進めた。
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