研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
20H05128
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 一大 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (90433581)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 寒冷適応 / 日本人 / 褐色脂肪組織 / 遺伝子多型 / サーマルカメラ |
研究実績の概要 |
本課題では、出ユーラシア集団での低温環境への遺伝的適応に寄与した座位を同定する目的で、アメリカ大陸進出への中継地点であり、かつヒト集団間での遺伝的な近縁性が高い東アジア地域を対象として、主要な熱産生組織である褐色脂肪組織の機能的な多様性を調査する研究を実施した。褐色脂肪組織の活性の個人差に関連するゲノム多型を同定するためのコホート構築のため、北海道在住の成人男女27名を対象にPET-CTを用いた褐色脂肪組織活性の測定実験を実施した。この実験は研究協力者が中心となって実施し、被検者からはゲノムDNA抽出のための口腔粘膜試料の提供を受けた。この27名分については、DNAマイクロアレイ実験によるゲノムワイドSNP遺伝型判定実験と、それに基づくインピュテーションを実施し、全ゲノムレベルでの多型情報を復元した。 また、上記のコホートとは別に、関東地方在住の成人男女50名を対象に、冬季(12月~3月)に赤外線カメラを用いた褐色脂肪活性測定実験を実施した。被検者には薄着で19℃に保温した実験室内で90分間滞在してもらい、その間の体表面温度の変化を経時的に記録した。また。ゲノムDNAを抽出するための唾液試料、身体測定値、生活習慣・出身地などに関する情報も同時に提供を受け、褐色脂肪組織活性を標的としたゲノム解析研究のための第2のコホートとした。 翌年度以降は、これらのコホートを用いて、南北アメリカ大陸の先住民集団等で過去に自然選択が作用した痕跡が認められている座位を調査し、熱産生能力との関連が強い領域を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での活動制限が長引いために、申請時の計画とくらべて資料収集がはかどらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PET-CT実験・サーマルカメラ実験で収集した褐色脂肪組織活性測定データとゲノムDNA試料を用いて、主に南北アメリカ大陸の先住民集団等を対象とした集団遺伝学解析から、過去に自然選択が作用した痕跡が報告されている座位について、実際に熱産生能力の多様性と関連しているものを探索する。また、褐色脂肪組織活性だけでなく、寒冷曝露時の深部体温変化や酸素消費量・呼吸商変化等の多様な指標を用いて、蓋然性を高めることを試みる。
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