研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
20H05135
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木村 亮介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00453712)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 皮膚形質 / 遺伝 / 自然選択 / アジア / 環境 |
研究実績の概要 |
ヒトが拡散する過程で、新天地における紫外線量、温度、湿度といった物理環境およびそれに依存する微生物環境にヒトの皮膚は適応してきたと考えられる。皮膚で高発現するPOU2F3遺伝子においては、ネアンデルタール人由来のハプロタイプがアジア人において約66%の頻度で受け継がれていることが知られている。本研究では、POU2F3の一塩基多型(SNP)について皮膚形質との関連を解析した。同意を得た成人男女249人を対象とし、皮膚形質(皮膚の水分量、油分量、ポルフィリン量、皮膚色)の測定を行った。また、唾液からDNAを抽出し、POU2F3遺伝子領域の3ヶ所のSNP(rs17123792、rs744983、rs11217806)の遺伝子型を判定した。ここで、rs11217806がネアンデルタール由来のハプロタイプを示すタグSNP(祖先型がネアンデルタール由来)であり、rs17123792とrs744983における派生型アリルは、それぞれオセアニア地域およびヨーロッパ地域においての頻度が高いことが特徴的である。 結果として、オセアニア地域に多く分布するrs17123792の派生型アレルは額のポルフィリン量を少なくすることが示された。ポルフィリンは皮膚常在菌であるアクネ菌の分解産物であり、ポルフィリン量はアクネ菌の量を反映していると考えられる。また、rs744893においてヨーロッパに多くみられる派生型アレルは、額の水分量の低下と関連していた。このことから、POU2F3においてアジアで多くみられるハプロタイプは、ヨーロッパで多くみられるハプロタイプと比べ、皮膚の水分量を増加させる効果があることが示された。アジア人特異的な皮膚の特徴がネアンデルタール人からの遺伝子流入によって獲得されたことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により新たなサンプリングはできなかったが、既存のサンプルを用いた解析により注力し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
新たなサンプリングができないかわりに、研究の方針を既存のサンプルを用いたゲノムワイドな解析に切替え、研究を進めている。
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