サンタ・デリア遺跡はペルー共和国カハマルカ県カハマルカ郡エンカニャーダ区に位置するカハマルカ晩期(1200-1532CE)の遺跡である。サンタ・デリア遺跡の出土人骨は部屋状構造の内部に伴う墓から出土しており、一般の住居と墓地が明確に区別されていない場所から複数個体が混じった状態で発掘された。本研究の目的は、サンタ・デリア遺跡から出土した人骨に残された利器による損傷を記載・分析し、古代アンデスにおける組織的闘争の起源に迫ることである。本研究の結果、出土人骨は頭蓋から17体であり、そのうち6体は未成人、11体は成人(男性は7体、女性は4体)であった。頭蓋の利器損傷は陥没骨折であり、3体(標本番号TM4、TM5、TM7)には治癒痕がない致命的な骨折があった。3体に認められた致命的な骨折は以下の通りである。(1)標本番号TM4では、左頭頂骨に直径2mmの円形の陥没骨折があり、陥没部から後方に骨折線が広がっていた。治癒痕がないため致命的な外傷であった。(2)標本番号TM5では、前頭骨右側に長径55mm、短径22mmの楕円形の陥没があり、陥没部から右前方に向かって骨折線が広がっていた。この骨折は治癒痕がないため致命的な骨折であった。注目すべきことに、この個体には治癒痕を伴う左腓骨が残っており、致命傷を受ける前から繰り返し暴力を受けていたことが推察された。(3)標本番号TM7では、左右頭頂骨に2箇所に陥没骨折を認めた。右頭頂骨では頭頂結節付近に直径25mmの円形の陥没があり、骨折線は放射状に下方と前内側に広がっていた。左頭頂骨ではラムダ縫合中央部に直径25mmの円形の陥没があり、縫合骨を介して上方に骨折線が広がっていた。いずれの陥没骨折も治癒痕がないため致命的な骨折である。この個体は繰り返し暴力を受けて死に至ったことが推察された。
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