研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
20H05139
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
嶋田 誠 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (00528044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多型 / STR / グルタミン反復 / ポリグルタミン病 / ヒト個人ゲノム |
研究実績の概要 |
2020年度は次のような種類の試料やデータについて利用可能性を調査検討した。 1、各大陸でのヒト集団ゲノムデータ:Simon Genome Data Panel (SGDP)の利用可能性調査:Gymrekらは、LobSTRというツールを開発し、short-read次世代シークエンス技術による世界の279個体のヒト個人ゲノムデータから、短い単位で反復する(STR)の反復回数を推定した。そのデータがwebサイトを通じて公開しているという情報を得たので、ダウンロードして、データの構成を確認した。その結果、実際のサイトでは全染色体のうちのいくつかは重複したり欠損したりしていた。著者に連絡を取り、軽微な修正はすぐに対応されたが、18番染色体のデータがなく代わりに17番染色体のデータが重複している点は修正対応されないまま続いていた。 2、各大陸でのヒト集団試料: これまで大規模ヒトゲノム多様性研究で用いられてきた試料を提供してきたCoriell Institute(米国 NJ州)より、African 9集団より207個体、European 3集団より42個体、South Asian 4集団より58個体、East Asian 3集団より42個体、混血American 4集団より41個体、計23集団より390個体のゲノムDNA試料を調達した。 3、世界のポリグルタミン病疫学データ:中間型仮説によると、ポリグルタミン病の症例数が多い集団はその原因とされる、長い反復の遺伝子型が多いと予想される。そこで、反復数多型のデータが存在しない現状でも、ポリグルタミン病の症例数のデータ(疫学データ)を調べることで、おおよその反復多型の多様性を推定できないか、疫学論文の文献調査を実施した。その結果、発症率に集団間で1ケタ近い差があることや、均質な疫学データを得るには難しい現状であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始当初、新型コロナのパンデミックの影響で、世界中のヒト集団DNA試料を以前から管理・配布してきた歴史ある機関における供給体制が以前のように回っておらず、計画変更を余儀なくされた。その際には、試料の出所とその民族の人類進化上の背景を調査するところから始め、別のDNA repositoryのヒト集団DNA試料を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
その後、別のDNA repository、Coriell Instituteよりヒト集団DNA試料を調達でき、また比較対象群として、チンパンジーDNA試料を京都大学霊長類研究所(当時)と大型類人猿情報ネットワークGAINの協力により複数個体分調達することができた。今後は、それらのDNA試料を用いて当初の計画である一分子Long-read sequencing技術を用いて、STRと近傍SNP配列一つながりのハプロタイプ(hapSTR)型判定を実施していく。
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備考 |
嶋田 誠. (2021). 均質化と多様化:ヒトと家畜を決定づけた形質. 科学, 91: 178-181. 嶋田 誠.ゲノム情報から人類進化の特徴を考える. ICU Alumni, 2021/3/19 稲村哲也・中尾央(編). 出ユーラシア・プロジェクト 第5集 2020年度 研究活動報告書. 岡山大学文明動態学研究所(発行). ISBN:978-4-910223-04-9
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