研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
20H05142
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
古川 勇気 新潟県立大学, 国際地域学部, 講師 (90844168)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンデス山村 / 水 / 鉱山開発 / 環境問題 / 民話 / コスモロジー / 自然景観 / 農民 |
研究実績の概要 |
本研究は、科学研究費の新学術領域「出ユーラシア」の2020年度公募研究に採択された研究である。 本研究では、南米ペルー北部山村における「水」をめぐる自然・生活環境変化にともなうグローバルな開発実践と、現地の民話に基づくコスモロジーにまつわるローカルな実践とのコンフリクトを調整する方途を探っている。特に、現地住民のなかには、民話やコスモロジーが宿る景観を禁忌と捉えている者もあり、そうした景観という視点から、近代的な開発と現地住民の世界観との対立・折衝・調整過程を研究している。 2020年2~3月にフィールド調査を実施し、現地の民話やコスモロジーに関して中学校教諭に面接調査を行い、ペルー北部の民話にまつわる16編の文献を収集した。さらに、民話に基づく自然景観をGPS端末機器によって踏査し、自然景観周辺に住む住民の生活について参与観察を行った。また2022年8~9月に現地でフィールド調査を行い、自然景観に民話やコスモロジーが宿る特定の地域でのインタビュー調査と、鉱山の影響で汚染している川周辺の住民に聞き取り調査を行った。特に、特定の自然景観には「よくな時間帯(Mala Hora)」という行動認識があり、夕方5時から明け方4時にかけて物理的なアクシデントへの対処に加え、精神的存在への対処も必要になる。そうしたMala Horaに対する体験談も10話近く入手した。 本研究は発展的な学際的研究の基盤研究であるため、異分野の研究者との交流が必須である。「出ユーラシア」参加メンバーであるB01班の河合洋尚氏とA01班のアンデス考古学者である松本雄一氏、山本睦氏と、景観考古学/人類学研究会を重ね、「景観」をめぐる成果(論集)を出版する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響によって、予定よりも海外へのフィールド調査が進まなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で、特定の自然景観に対する住民の語りや経験談を得ることができたので、今後もその調査を継続していく。さらに、鉱山開発や環境開発は自然景観を改変するものであり、そうしたものに対する住民の語りの採録も進めていく。 新学術領域「出ユーラシア」の研究成果として、2023年度中に論集を刊行する。また、フィールド調査で得たデータの分析は進んでいるので、随時、公表・公開に努めていく。
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