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2020 年度 実績報告書

分子ダイマーダイポールが創成する量子スピン/電荷液晶

公募研究

研究領域量子液晶の物性科学
研究課題/領域番号 20H05144
研究機関東北大学

研究代表者

佐々木 孝彦  東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード分子性有機導体 / 量子電荷液体 / 量子スピン液体 / ダイマーダイポール
研究実績の概要

本研究では,分子性有機物質である量子スピン液体k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3を対象として,スピン非秩序状態における電荷(ダイマーダイポール)ゆらぎ-分子格子フォノン結合によるクラスター化・液晶化形成を低エネルギー分光手法により実験的に明らかにすることを目的としている.2020年度は,同物質に対する遠赤外-赤外分光測定による電荷揺らぎを反映する低エネルギー領域での光学スペクトル測定を行い,モット絶縁体状態であるはずの量子スピン液体状態において,明瞭な光学ギャップが開かずに電荷が揺らいだままである兆候をブロードな励起構造として観測した.また,同物質に対してエックス線照射を行い分子欠陥生成によるランダムネスを導入すると,このブロードなギャップレス励起が増強する様子が観測された.この結果は,本物質の量子スピン液体状態に特徴的な電荷ゆらぎ(ダイマーダイポールゆらぎ)が励起スペクトルとして現れ,この起源となる極性領域のサイズや分率がランダムネスの導入により変化することを示している.この結果は,ダイマーダイポールのゆらぎが量子スピン液体状態形成の要因である可能性を示すものである.この電荷状態については,分子格子との結合も合わせて考える必要がある.このため非弾性中性子散乱実験による格子ダイナミクス測定を計画し,試料準備と中性子実験施設(フランス)との調整,またリモート実験のテストなどを行った.
くわえて,領域内共同研究として二次元カゴメ格子をもつ金属有機構造体における超伝導状態研究を行い,非従来型超伝導を示すことを発見した.本共同研究では,本物質が示す金属性を光学スペクトルから検証することを目的に,遠赤外-赤外反射分光測定を行った.実験結果から,超伝導の非従来性を議論するために必要となる,キャリア数,有効質量などの基礎電子物性パラメーターを得ることができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

量子スピン液体物質k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3の電荷揺らぎ状態で発現する6K異常に関して,圧力下での静磁化測定を行い,圧力下超伝導状態への接続についても調べる予定であったが,圧力セルからのバックグラウンド測定に時間を要している.現在,再現性を確保できるようになったので,2021年度において進捗させることができる.

今後の研究の推進方策

2021年度には,量子スピン液体物質k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3の非弾性中性子散乱実験を行うために2020年度に行った試料準備,実験実施についてのオンラインでの海外共同研究者との打合せ,現地との間のリモート実験テストなどをもとに,フランスグルノーブル中性子散乱実験施設を利用した実験を,新型コロナ感染の収束状況による現地での実施可能性も検討しつつ,リモート実験を実施する.この非弾性中性子散乱実験の結果とその解析により,スピン-電荷のゆらぎと分子格子との相関を明らかにする予定である.2020年度実施の光学スペクトルの結果と合わせて,非弾性中性子散乱スペクトル,圧力下静帯磁率測定の結果を統合して「6K異常」の起源を明らかにする.あわせて,圧力下超伝導と6K異常の関係性を明らかにし,超伝導状態の特異性解明を進める.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Goethe University Frankfurt/MPI for Chemical Physics of Solid(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Goethe University Frankfurt/MPI for Chemical Physics of Solid
  • [国際共同研究] Institut Laue-Langevin(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Institut Laue-Langevin
  • [雑誌論文] Strongly correlated superconductivity in a copper-based metal-organic framework with a perfect kagome lattice.2021

    • 著者名/発表者名
      T. Takenaka, K. Ishihara, M. Roppongi, Y. Miao, Y. Mizukami, T. Makita, J. Tsurumi, S. Watanabe, J. Takeya, M. Yamashita, K. Torizuka, Y. Uwatoko, T. Sasaki, X. Huang, W. Xu, D. Zhu, N. Su, J.-G. Cheng, T. Shibauchi, K. Hashimoto.
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 77 ページ: eabf3996-1-7

    • DOI

      10.1126/sciadv.abf3996

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 分子性有機導体k-(d8-BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brのエックス線照射効果2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝彦, 佐藤直道, 米山直樹
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会
  • [学会発表] Charge and spin cluster/liquid crystal state and superconductivity induced by coupling between phonon and the charge/spin liquid state in strongly correlated pi-electrons system2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiko Sasaki
    • 学会等名
      Quantum Liquid Crystal A01 Kickoff meeting
    • 招待講演
  • [学会発表] 傾斜エックス線照射した分子性有機導体 k-(BEDT-TTF)2Xの赤外分光2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝彦, 佐藤直道, 古川哲也, 杉浦栞理, 井口敏, 米山直樹, L. Kang, 赤木和人, 池本夕佳, 森脇太郎
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会
  • [学会発表] Nanoscale polarized clusters in a molecular dimer-Mott insulator as precursors of electronic ferroelectricity probed by conductance noise spectroscopy2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiko Sasaki
    • 学会等名
      Quantum Liquid Crystal meeting 2020
    • 招待講演
  • [学会発表] エックス線照射した分子性ダイマーモット絶縁体κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3における赤外分光2020

    • 著者名/発表者名
      桐野友輝, 佐藤直道, 井口敏, 古川哲也, 杉浦栞理, 米山直樹, 池本夕佳, 森脇太郎, 佐々木孝彦
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会
  • [備考] 東北大学金属材料研究所低温電子物性学研究部門HP

    • URL

      http://cond-phys.imr.tohoku.ac.jp/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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