研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05154
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤城 裕 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20739437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジカル励起 / ホモトピー論 / 磁性体 / ダイナミクス / 物性理論 / ポロジカル不変量 / トポロジカル相 / 輸送現象 |
研究実績の概要 |
スピン1のbilinear-biquadratic模型において、古典モンテカルロ法から得られたスピン配位を種とした半古典的なダイナミクスの数値解と、量子揺らぎを記述するflavor-wave理論による解析解が一致することを解析的に示した。この古典-量子対応を用いることで、量子効果に起因した様々な時間・空間相関を大規模数値計算で調べることが可能となった。実際、スピン液晶相におけるBKT転移点近傍の動的構造因子を調べたところ、低エネルギー領域において、南部-Goldstoneモード以外に、対称点及びその近傍にZ2ボルテックスに由来するものだと考えられる非自明な構造が現れることが明らかとなった。 同模型の特別な点では対称性がSU(3)に拡大し、その連続極限はCP2非線型シグマ模型に帰着される。そこで、この模型にDzyaloshinskii-守谷型の相互作用項を加えることによって、安定な2次元スキルミオン解を解析的・数値的に構成した。この解は、無限遠方ではスピン液晶状態となり、スキルミオンの周りには磁気双極子が現れるような、量子液晶特有のトポロジカル励起である。 また、時間反転と空間並進を組み合わせた対称性に保護された3次元マグノントポロジカル結晶絶縁体の理論的提案を行った。ボゾン系では通常の時間反転対称性はKramers対の存在を保証しないが、お互いに逆向きのスピンのペアを基本構造とすることで、Kramers対が保証される擬時間反転対称性をマグノン系に導入できる。本研究ではこのペアスピンの“液晶性”の概念を拡張することで、上記の相を実現する模型の提案に成功した。さらに、提案したモデルが磁性体CrI3で実現される可能性があることを明らかにした。また、新規輸送現象として、電荷を持たないマグノンを電場により駆動することが可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、トポロジカル励起のダイナミクスによる創発現象を明らかにしただけでなく、素粒子分野の研究者との共同研究により、当初の計画にはなかった、量子液晶特有の新しいトポロジカル励起を提案できたため。また、量子液晶の一つのカタチとして、ペアスピンの“液晶性”という概念を導入・拡張することで、3次元マグノントポロジカル結晶絶縁体の理論的提案を行ったため。これも当初の計画にはなかったが、量子液晶という本新学術領域に参画することで得られた視点による成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の順調な研究の進捗状況をふまえて、予定通り2021年度の研究計画を遂行する。また、今年度研究計画に無かった量子液晶に関連する成果を複数挙げることが出来たため、それらの問題についても深化・発展を図り、量子液晶という新規概念に対する新しい具体例を提案する。
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備考 |
https://sites.google.com/site/yutakaakagiacademian/
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