研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金澤 直也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10734593)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スキルミオン / スピンカイラリティ / スキュー散乱 / 非相反伝導 |
研究実績の概要 |
糸状トポロジカルスピン構造であるスキルミオンストリングの配向秩序の変化によって生じる電子散乱現象を、磁場や歪みといった外場や微細化に伴う表面効果によって制御することが本研究の全体目的である。 そのような大きな目標のもとで、本年度は主にスキルミオンストリングの液晶状態が発現する候補物質について薄膜作製を行い、それらに対して小角中性子散乱実験による磁気構造の解明と電気伝導特性といった基礎物性測定を行うことを目指して研究を進めた。 その結果、当初の予定を大きく超えて全体の研究目標の多くを達成することができた。候補物質であるキラル磁性体MnGeについて分子線エピタキシー法(MBE法)による高品質薄膜を作製できただけでなく、高圧下におけるフラックス法によって世界で初めて単結晶化することができた。これにより、磁場、歪み、微細化などの外部制御因子を自在に変化させた時に、MnGeにおけるスキルミオンストリングの配向秩序がどのように応答するかを系統的に調べることができた。特に、小角中性子散乱法により配向状態を直接観察することができた。スキルミオンストリング秩序が磁場や温度によって融解し、目的としていたストリングの配向性が揺らいでいるトポロジカルスピン液晶状態が出現することがわかった。さらにこのスピン液晶状態においてスピンカイラリティの揺らぎによるスキュー散乱が巨大なホール効果を開拓することができた。 これらの成果は有名雑誌に論文として出版することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、当初の予定であったキラル磁性体MnGeの薄膜作製、小角中性子散乱による磁気構造の解明、基礎物性測定を全て実施し、さらに高圧フラックス法を用いた世界初のMnGeの単結晶合成やスピンカイラリティ揺らぎによる巨大なスキュー散乱の発見に成功した。特に論文や学会発表といった成果発表も行っており、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
世界で初めてキラル磁性体MnGeの単結晶試料を得られたおかげで、キラリティの揃ったスピン揺らぎに由来した電子物性にアクセスすることが可能になった。今後はこのアドバンテージを生かして、ベクトルスピンカイラリティの揺らぎに由来した非相反電気伝導を開拓することを中心に研究を進める。さらに発展課題として非弾性中性子散乱実験によってスピン揺らぎダイナミクスの直接観察を行い、電子散乱現象の微視的メカニズムの解明にも迫ることを目標にする。
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