研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05157
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川崎 猛史 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10760978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 液晶秩序 / 分子動力学法 / 異方性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ソフトマター物理学で得られた理論的知見を応用し,電子系をはじめとする,量子系で観測される新奇な相転移現象の発現機構を解明することである.量子系の第一原理計算は計算コストが高く,大きな系を扱うことが難しいため,ナノスケールからメソスケールの構造形成に関する理論は未開拓である.本研究では,量子効果として本質となりうる異方的相互作用を取り入れた古典粒子系を用いることで,数値計算の大規模化を図る.その中で,粒子の異方性を系統的に変化させた際における,固体や液体の相転移挙動や,その力学応答を調べることで,量子系で見られる新奇現象の理解につなげることを目標とする.当該年度は、近年提案された異方ポテンシャルモデルを用い,特に2次元系において温度と異方性を変化させた際の相図を中程度の大きさの系(1万粒子程度)で完成させた。2次元系における固体・液体転移は3次元系とは異なることが等方剛体球系において見出されているが、本研究は、これを異方粒子系で検証した重要な研究例になると考えている。特に特筆すべき重要な点は、異方性が中程度の領域においては、温度の低下に伴い、等方液体相・ヘキサティック相・柔粘性結晶相・配向結晶相が見られたが、そこでの転移描像は、それぞれの相を特徴づける秩序変数の空間相関関数が冪的に減衰することから、2次元系特有の融解転移描像であるBerezinskii-Kosterlitz-Thouless転移が3回起こることを示す準備的結果を得ている。ただしこの転移描像は極めて大きな系で検証する必要があり、来年度は、精密な検証を行い研究を完成させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は2次元結晶転移における異方性の影響に関する重要な知見が得られた.本年度は異方性を系統的に変化させた際の相転移挙動を明らかにすることを計画しており,その目標は概ね達成されている.現在,数値計算のシステムサイズ依存性の検討など詰めの作業を行っており早急に成果を発信していきたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,精密な検証を行い今年度行った研究を完成させたい。より大きな系で相図を完成させたら、さらにそれらの系にせん断等の外場を与えた際の力学応答を調べ、位置秩序・ボンド配向秩序・粒子 の異方性に関するネマティック秩序が外場によりどのように変化するかを明らかにする。また、最近我々は、異方粒子にキラルな相互作用をもつ古典粒子モデルを構築することができ、これを用いることで、量子系において近年注目されているスキルミオンに類似した構造が得られた。今年度はここで得られたスキルミオンの構造の詳細を調べることで、量子系における磁気スキルミオン構造との相違点や共通点などを明らかにする予定である。
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