研究領域 | 変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot |
研究課題/領域番号 |
20H05175
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
中野 満寿男 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (40713954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 台風 / 温帯低気圧化 / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
本年度はJRA-55長期再解析データ(1958-2019年)に、熱帯低気圧トラッカーTempestExtremesを適用し、台風発生から、温低化後までを含む経路データを作成した。このデータを用いて低気圧位相空間解析を行った結果以下の点が明らかになった。 (1)トラッカーは気象庁ベストトラックデータで解析された台風の約8割について経路を作成できた。また、台風の発生個数や温低化する台風の個数の季節進行を再現できていることを確認した。(2)ベストトラックと同様に、トラッカーによる台風の発生個数には減少トレンドがみられた。(3)その一方で温低化する台風の個数はほぼ横ばいであり、結果として温低化する台風の発生割合は増加傾向にある。(4)温低化する台風の発生率は大まかには西太平洋東部で高い。近年西太平洋西部での台風発生が増加する一方で、西太平洋中部での温低化台風の発生割合が増加している。(5)温低化の開始終了位置は解析期間の前半と後半の台風シーズン平均ではほとんど差が見られなかったが、月ごとでは6月に北上傾向、9-10月に南下傾向にある。(6)合成図解析の結果、温低化の開始終了位置の環境は、6月は海面水温の南北傾度が大きく、対流圏上層と下層との風速差(鉛直シア)が大きい、すなわち傾圧性が大きくなっており、9-10月は逆に海面水温の南北傾度が小さく、鉛直シアも小さい、すなわち、傾圧性が小さくなっていた。 以上のように、台風温低化のトレンドを明らかにし、来年度HighResMIPモデルの結果を検証する上で重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、全球非静力学モデルNICAMによるシミュレーションデータの解析まで行う予定であったが、セキュリティーインシデントの発生などにより、データへのアクセスが困難となり未達となったため。
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今後の研究の推進方策 |
HighResMiPモデルデータの整備を進めるとともに、取得したデータについて今年度と同様の解析を行う。
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