研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05176
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森川 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10632416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 収束電子回折 / ナノ電子プローブ / 局所構造解析 / 界面・ナノドメイン / 電子密度分布解析 |
研究実績の概要 |
本研究ではナノ電子プローブを用いた収束電子回折法により,界面やドメイン境界等の機能コアにおける結晶構造解析および電子密度分布解析を目指している. 電場印可その場観察には,集束イオンビーム加工装置を用いた電子顕微鏡試料作製が不可欠であるため,その手順や加工条件の確立と作成された観察用試料の結晶性評価手法の確立を行った.テスト試料としてシリコンを用いて、異なる加工条件や加工装置を用いた場合の結晶性の変化を、収束電子回折図形の対称性の変化から定量的に明らかにした.これによって電場印可その場観察実験用の観察試料作製時の指針を得た. 機能コアの例として,界面誘起分極構造の解析を行った.ナノ電子プローブを試料面上でスキャンさせることで,界面直上やその近傍 の結晶対称性を評価した.試料は双晶界面でのみ強誘電性が予想されているCaTiO3である.各ビーム位置における収束電子回折図形の対称性を定量的に評価することで,CaTiO3の(110)双晶界面が2種類の異なる構造を持つことが明らかになり,また解析によって得られた結晶構造からは分極構造が示唆された. 広く応用されている強誘電体であるBaTiO3において,近年最低温相の菱面体構造が室温以上まで存在していることが報告された.本研究では,このナノドメインの電場応答を明らかにすることを試みた.電子顕微鏡観察のための最適な試料形状等を試行錯誤し,また2軸傾斜が可能な電場印可その場観察特殊ホルダーへの接続等を最適化した.これまでにメゾスコピックな分極ドメインの反転に加えて,ドメイン分布の変化によると考えられる応答が観察されており,実験結果を再現するモデル構築を試みている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,初年度は収束電子回折法による結晶性の定量評価手法について確立し,集束イオンビーム加工によって作成された電子顕微鏡試料の評価を行った.また,電場印可実験のための試料加工手順や実験条件を確立し,BaTiO3の電場応答のナノ電子プローブを用いた解明を進めている.現時点にてこれまで知られていなかったナノドメインの電場応答が明らかになっている。最低温相の菱面体相ナノドメインの積層による実験の再現を試みており,おおむね計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度はBaTiO3の電場応答について,実験を再現できるモデル構築を試みる.積層方向に異なる方位,大きさのドメインが積層していることが予想され,解析のためのソフトウェア開発も行う.モデルが構築できたのち,さらに一歩進めて収束電子回折図形とモデル計算との定量比較から,電子密度分布の解析を目指す.
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