公募研究
本研究では、結晶欠陥特有の電子状態を機能に結び付けることを目的としている。シリコンの単原子層物質であるシリセンは、バックルしたハニカム構造を有し、その結果として線形なバンド分散を持つ二次元トポロジカル絶縁体となる。その新奇な特徴を活かしたデバイスが、期待される中、電界効果トランジスターが試作された。ところが欠陥によって移動度が低い値に留まるなどの問題が残っている。一方、シリセンの点欠陥や相境界といった欠陥が、磁性やバレー流の源となるなど、欠陥に特有の物理現象も注目されている。したがって、シリセンの欠陥を原子レベルで調べることが重要である。そこで本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)と走査トンネル顕微鏡(STM)の複合装置により、シリセンの欠陥の構造や端の構造を調べた。具体的には、銀基板上にシリセンの一次元構造が作製できることを示した。四角形の環を含む対称性のよいユニークな構造をとっていることが判明した。一方、一次元構造の両端は鏡映対称性が破れた構造をとっており、基板の第二層の対称性が構造に影響を与えているという非自明な知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
シリセンの作製では、シリコンの蒸着量と蒸着中の基板の温度によって、様々な相ができることがわかっている。本研究では、より精密に条件を制御して、これまで報告例がない、シリセンの一次元構造を見出すことができ、そのユニークな構造を明らかにすることができた。
シリセンの作成における相図が把握できたので、人工的な欠陥を導入するべく、シリセンに単原子を蒸着して、新奇機能コアの創製をねらう。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Physical Review Materials
巻: 5 ページ: 031002 1-6
10.1103/PhysRevMaterials.5.034002
Physical Review Applied
巻: 15 ページ: 034079 1-8
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Nanotechnology
巻: 32 ページ: 035706~035706
10.1088/1361-6528/abbea8
http://www.afm.k.u-tokyo.ac.jp/