研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 俊介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60452273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸素欠損 / 電気化学触媒 / 金属空気電池 / 非晶質層 |
研究実績の概要 |
酸素の電気化学反応は水の電気分解、電解採取プロセスのアノード反応、金属空気電池などに関わる非常に重要な反応である。酸素の電気化学反応を現実的な速度で進行させるためには、熱力学的に必要と算出される電圧の印加だけでは足りず、活性化エネルギーに相当する余分な電圧(過電圧)の印加が必要となり、これが副反応の進行や莫大なエネルギー損失、電極の消耗などの重大な問題の原因となっている。 本研究では、酸化物触媒の酸素欠損および表面に形成される非晶質層と、酸素発生に対する触媒活性の関係性について、特に、ZnイオンとCoイオンの両方を含むスピネル型酸化物を用いて検討を進めた。酸素発生反応に対して、Coイオンの触媒活性よりもZnイオンの触媒活性は低いことが知られている。しかしながら、遷移金属全体の40パーセント程度までは、Znイオン量を増やした方が、触媒活性が向上することが明らかとなった。構造解析ならびに各種分光分析により、これは、Znイオンの量が増えると、酸化物表面に非晶質層が形成されやすくなり、結果として比表面積の増大および活性向上に繋がるためであることが明らかとなった。一方で、Znイオン量を増やしすぎると構造が不安定となり、結果として活性が低下することもわかった。 また、本研究から派生して、メタノールの酸化反応に対して活性を有する触媒材料の開発を行い、メタノール燃料電池へ応用するための研究を行うとともに、グルコース燃料電池やアルミニウム電池などへの応用研究に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酸化物触媒の酸素欠損およびその表面に形成される非晶質層と、酸素発生に対する触媒活性の関係性について、特に、ZnイオンとCoイオンの両方を含むスピネル型酸化物を用いて、当初の予定通り、検討を進めることができた。さらに本研究から派生して得られた、メタノール燃料電池やアルミニウム電池に関する研究成果を論文として発表した。特にアルミニウム電池に関する研究成果は、本領域に所属する東京大学溝口照康教授のグループとの共同研究の成果であり、領域内連携を円滑に進めることができた。以上より、当初の予定以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、上述の研究結果を踏まえ、複数の異なる構造や組成を有する物質を組み合わせて界面を形成し、酸素発生反応に対する触媒活性との関係性を調査する。さらに、本研究で設計した種々の電気化学触媒を用いて、エネルギー・物質変換デバイスへの応用を行う。例えば、金属空気電池、メタノール燃料電池、グルコース燃料電池、二酸化炭素の電解還元装置などへの応用を、引き続き試みる。候補触媒としては、酸化物のみに絞るのではなく、硫化物・貴金属等のより高い性能が期待できる触媒も検討し、全体として性能の最大化を図る予定である。
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