公募研究
SrTiO3(STO)上の単層FeSeは超伝導転移温度(Tc)が60-109Kであり、バルクFeSeのTc(8K)よりもはるかに高い。この高い転移温度の起源としてFeSe /STOの界面、特にSTO 表面の重要性が示唆されているが、その微視的起源は不明である。研究代表者はこれまで、世界で初めて単層FeSeの超伝導特性がSTO表面調構造に依存し、さらに 強相関超伝導体と同様な超伝導ドームの特徴があることを示した。本研究では、これまで行ってきた機能コアとしてのSTO/FeSeの界面、すなわちSTO表面に着目し た単層FeSeの高温超伝導の研究を発展させ、より高いTcを持つ条件を探索する。本年度は角度分解光電子分光(ARPES)を用いてNbドープされた基板上に成長させた単層FeSe/STOの電子状態測定を行った。その結果、60K程度からフェルミ準位での状態密度の低下および準粒子ピークの発達が観測された。これはこの系の超伝導転移温度が60K程度であることを示唆しているが、超伝導ギャップの大きさは60Kから最低温の25Kまでほとんど温度依存性を示さず、13meVで一定であった。通常のBCS理論に従う超伝導体では超伝導の発現から温度低下によってギャップが増大する振る舞いが見られるはずであるが、本結果はこれとは相容れないものであり非従来型超伝導が発現している可能性や、超伝導転移温度以上からギャップのような特徴が出現する擬ギャップ状態が存在することを示唆している。今後同一試料に対して超高真空中の電気伝導測定によって超伝導によるゼロ抵抗の検出を行うことで、より詳細な知見を予定である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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