研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05184
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 孝太郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (30635123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化物イオン伝導体 / アパタイト型構造 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,低温で高い酸化物イオン伝導度を示すアパタイト型構造をもつ材料を中心に,「イオン伝導経路・メカニズムの解明」,「酸化物イオン伝導体の機能コアの解明」,「解明した機能コアに基づく新材料探索」を実施することを目的としている.特に本課題では,単結晶中性子回折法という従来のアパタイト型酸化物イオン伝導体で用いられてきた研究手法より細かい構造情報が明らかにできると期待される手法を用いることがポイントである.ここまでの研究で,特に高い酸化物イオン伝導度を示すアパタイト型ランタンシリコン酸化物やネオジムシリコン酸化物について,高温単結晶中性子回折測定をJ-PARC Senjuにて実施した.数ミリメートルの大きさをもった単結晶をそれぞれの試料について用意し,金属ワイヤーを用いて回折計に結晶をマウントし,真空加熱炉にて高温測定を実施した.測定は白色中性子を用いた飛行時間法により実施した.測定したデータは,専用のデータ処理ソフトStarGazerにて構造解析を行うための反射データにリダクションした.続く構造解析はJANAを用いて,現在進めている.高温において伝導すると予想していた酸化物イオンの原子変位パラメーターが大きくなる様子を明らかにしており,今後のさらなる構造解析により,その詳細な伝導経路を明らかにする予定である.複数の温度点で測定したため,結晶構造が温度変化に伴いどのように変化し,イオン伝導度とどのような関係があるかについても今後の解析で明らかにしていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目的としていた高温の中性子回折測定を実施することができ,イオン伝導経路を示唆するような結果が暫定的な解析で得られている.機能コアの本質に迫るためには,さらに細かい構造解析が必要であり,今後の課題となっている.
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今後の研究の推進方策 |
第一に測定を終えたデータについて構造解析を完了させる.特に過去の研究で議論されていて,明確になっていないイオン伝導経路を解明することを目指す.従来の研究は粉末中性子回折法や単結晶X線回折法などでなされていたため,本課題で使っている単結晶中性子回折法は,これまでの研究よりも詳細な構造情報を引き出せると期待され,本手法でしか得られない新しい知見を導けるように検討する.実験で明らかになった情報は,理論計算にも活用し,理論的な側面でのメカニズム解明も目指す.
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