令和3年度はBaSi2多結晶薄膜中の点欠陥について、Positron Annihilation Spectroscopy(PAS)を利用して、BaSi2多結晶薄膜中の空孔欠陥評価を行った。900℃のアニール前後で比較したところ、アニールによって膜中の空孔型欠陥が低減したことを示唆する結果を得た。フォトルミネッセンス測定においても欠陥が低減したことを示す結果が得られており、ポストアニール処理がBaSi2多結晶薄膜の高品質化に寄与することを示唆している。 本研究で得られた機能コア欠陥に関する知見を用いて,BaSi2ホモ接合太陽電池の作製を行った。真空蒸着中に成長速度と蒸気組成を2段階制御することで、単結晶Si基板上に高品質BaSi2薄膜を作製することに成功した。この二段階蒸着法に加え、アルミニウム誘起成長(AIC)法により作製したp型多結晶Si層をBaSi2成長の下地として使用して、ノンドープでn型を示すBaSi2の一部をp型化することでホモ接合を形成した。ダイオードとしては完全な整流特性を得ることができなかったが、負バイアス下にて分光感度を得ることができた。pn接合のリーク要因を解決することができれば、太陽電池として機能することを示唆している。 ホモ接合とは別にp-BaSi2/n-Siヘテロ接合型太陽電池の作製も行った。2段階製膜の初期段階において蒸着速度を低速に保つことで、開放電圧と曲線因子を向上させることに成功し、10%を超えるエネルギー変換効率を達成した。開放電圧向上は低速蒸着により原子の再配列が促進されたことによるものと考えられる。BaSi2を用いた太陽電池としては、現在報告されている中で最も高い効率となり、真空蒸着により作製したBaSi2多結晶薄膜が、欠陥制御を踏まえたプロセスを施すことによって、太陽電池材料としての機能を向上できることを示すことができた。
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