研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05190
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子欠陥 / 強誘電体 / 磁性 / 量子力学応力 / 第一原理解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、第一原理計算により、SrTiO3中の転位芯近傍における磁性と強誘電特性の発現の有無を評価し、電子状態を解析することでその発現機構を原子・電子レベルから解明することを目的とする。さらに、局所的な量子力学応力を解析する手法を開発し、これを用いて転位芯近傍の力学場解析を実施し、発現する磁性・強誘電特性とミクロな応力場との関連性(マルチフィジックス原理)を検討する。 初年度である2020年度は、強相関系の電子状態を精密に評価するDFT+U方法と原子軌道の線形結合(LCAO)基底を用いた線形化方法を併用することで、大規模な第一原理解析を実施する解析環境を構築した。さらに、上記で構築した量子解析により、SrTiO3の転位における原子スケールの磁性強誘電性発現の有無とその特性を原子/電子レベルから評価した。刃状転位芯は空孔を内包した欠陥構造を有しており、転位線状に配置する遷移金属Ti原子列が正負の磁気モーメントを帯びることをで反強磁性的な性質を発現させることを示した。また、転位芯近傍のナノ領域では、強誘電性も同時に発現し、転位芯自体がナノスケールのマルチフェロイックスとして機能することを解析的に示した。転位芯近傍の電子状態について評価・検討し、磁性は欠陥構造に起因する余剰電子がスピン分極することで生じること、強誘電性は転位芯近傍の、距離の-1乗に比例する特異性を持ったひずみ場によって生じることを、をそれぞれ明らかにした。また、らせん転位芯近傍についても同様の磁気・強誘電性の発現を示し、類似のメカニズムによって異なる機能が発現し得ることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、転位芯近傍の電子状態解析法と計算プログラムの整備改良、並列計算システムの構築、転位芯部における原子スケールの磁性や強誘電性発現の有無とその特性の原子/電子レベルから評価である。研究実績欄に記載のとおり、これらの予定項目はすべて実施し、それぞれの目的を達成している。したがって、本研究は当初予定どおり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、今後の研究の推進方策も当初予定した以下の項目について実施する予定である。 ・局所量子応力場解析手法の開発・上記量子応力場解析の格子欠陥への適用
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