研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05191
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石部 貴史 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50837359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱電変換 / 酸化物半導体 / 透明材料 / ナノドット / 界面制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、窓ガラスなどの透明材料の熱源に着眼して三熱電物性(ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率)の同時制御を実現し、高性能透明熱電材料を創製する。具体的には、状態操作を可能にする機能性欠陥に注目し、ZnOナノドット表面の格子間欠陥濃度を変調して電子・フォノン状態を操作したZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜を作製して上記三熱電物性の同時制御を目的とする。令和2年度、ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜の作製に向けて、まず母相のエピタキシャルSnO2薄膜の熱電特性評価を行ったところ、サファイア基板の面方位を適切に選ぶことで、結晶ドメインにおける機能コア界面欠陥密度を変調して、SnO2薄膜の熱電出力因子を2倍増大可能であることを見出した。この前向きな研究成果をさらに深めるべきと判断して当初の予定を変更し、ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜を作製・評価する以前にSnO2薄膜の電子輸送・熱輸送機構を探る方向に舵を切り、熱電出力因子増大に加えて、熱伝導理率の10倍程度低減も達成した。こうして、機能コア界面欠陥密度変調したエピタキシャルSnO2薄膜において、三熱電物性の同時制御を実現することに成功した。さらに、2021年度に行う予定であった熱電デバイスを1年早めて作製して、動作実証だけでなく、IoTセンサを駆動できる程度の出力を得ることに成功した。一方で、ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜に関しても同時に研究を進めており、その作製技術開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、令和2年度に、機能コア界面欠陥密度変調したZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜で出力因子増大と熱伝導率低減の同時実現を観測する予定であった。しかし、母相のエピタキシャルSnO2薄膜において、機能コア界面制御することで、熱電出力因子を2倍増大しつつ、熱伝導率をバルクの1/10に低減することに成功した。さらに、令和3年度行う予定であったデバイス動作実証も前倒しで行った。一方で、ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜に関しても進めており、その作製技術開発に成功した。このように、機能コア界面制御による高性能熱電材料の方法論を確立し、社会応用を見据えてデバイス化にも成功し、さらにZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜の作製技術開発にも成功したため、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、さらなる熱電性能向上を目指して、昨年度開発したZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜の熱電特性評価を行う。具体的には、基板温度400-600℃、酸素分圧0.001-0.1 Paの条件下で、パルスレーザー堆積法を用いて本薄膜を成長する。この際、ナノドットの結晶性を調整してナノドット表面の“格子間欠陥”濃度変調場(機能コア)を制御する。作製した薄膜の電気特性、熱伝導率測定を行い、機能コアと熱電物性の相関を明らかにする。もしナノドットの結晶性を調整したとしても、十分に機能コアを変調できない場合、不純物添加(Al、Ga等)を行い、ナノドット自体に格子間欠陥を導入することも視野に入れている。このように機能コア制御条件を最適化することで、ZnOナノドットとSnO2薄膜間の機能コア界面のエネルギー障壁を制御して輸送電子のエントロピーを向上させて高熱電出力因子を、機能コアにおけるフォノン散乱・状態密度変調効果を利用して低熱伝導率を同時に狙う。
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