本研究では、窓ガラス等の透明材料の熱源に着眼して三熱電物性(ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率)の同時制御を実現し、高性能透明熱電材料を創製する。具体的には、状態操作を可能にする機能性欠陥に注目し、ZnOナノドット表面の格子間欠陥濃度を変調して電子・フォノン状態を操作したZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜を作製して上記三熱電物性の同時制御を目的とする。まず母相のエピタキシャルSnO2薄膜の結晶対称性に注目し、薄膜成長方位と熱電特性の関係を調べたところ、サファイア基板の面方位を適切に選ぶことで、結晶ドメインにおける機能コア界面欠陥密度を変調して、SnO2薄膜の熱電出力因子を約2倍増大、熱伝導率を約10倍低減することに成功した。この薄膜の光透過率は可視光領域で80%以上であり、透明な窓ガラス等へ応用できる水準であることが分かった。本機能コア界面欠陥密度制御したSnO2薄膜は、ナノドット含有薄膜に着手する前に研究する価値があると判断し、計画を変更して本薄膜のデバイス化を行い、IoTセンサ駆動が可能な程度の出力を得ることに成功した。これは、透明薄膜熱電デバイスの実現へのさきがけとなる研究成果と言える。本SnO2薄膜の知見を元に、ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜の作製に着手し、直径20nmのナノドットがSnO2薄膜中に高密度に埋め込まれていることを確認した。本ZnOナノドット含有エピタキシャルSnO2薄膜の熱伝導率は約2.6 Wm-1K-1程度であり、当初の目的である極小熱伝導率化を観測した。この熱伝導率低減はZnO/SnO2界面におけるフォノン散乱に起因することを明らかにし、得られた界面熱輸送の知見を他材料に応用し、放熱・断熱材料の材料設計指針を提案することにも成功した。
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