公募研究
材料中の界面は結晶とは異なる原子構造を持ち、しばしば材料の巨視的特性を決定づける。特に、その特異な構造が熱を輸送する原子振動(フォノン)の伝搬を阻害し、熱伝導性を著しく低下させることが知られている。近年、電子デバイスの小型化やナノ構造化技術の発展に伴い、原子スケールでの界面熱伝導機構を理解する重要性が高まっている。しかし、界面原子構造がフォノン散乱挙動に与える影響やその空間的範囲を解明した研究例は乏しく、界面構造を積極的に活用した熱伝導制御指針は確立されていない。本研究では、原子レベルの熱伝導性を評価可能な摂動分子動力学法と、フォノンの界面透過率を定量化できるPhonon wave packet法を用いて、現象論とフォノン理論の両面から界面熱伝導機構の解明に取り組んだ。最終年度である2年目は、主にSi粒界、Si/SiO2界面の熱伝導解析を系統的に実施した。Si粒界については、新規に導入した多コア並列計算機やスーパーコンピュータを用いて、20種程度の粒界の熱伝導度を計算した。その結果、粒界近傍の原子数密度等の構造の乱れが熱伝導を支配することが明らかとなった。また、結晶Siと結晶SiO2、結晶SiとアモルファスSiO2の異相界面を対象に、各層の厚みを変化させながら系統的な熱伝導度・フォノン透過率評価を行った。その結果、熱を主に輸送する音響フォノンの透過率がSiO2の構造乱れによって顕著に低下すること、そして界面でのフォノン散乱・反射により結晶Siの熱伝導挙動にも大きな空間依存性が生じることが明らかになった。加えて、共有結合性Siとの比較のため、典型的イオン結合材料であるMgOにも本手法を適用したところ、ナノ多結晶体では粒界平行方向の熱伝導性も大きく低下することも明らかになった。総じて、ナノスケール界面のフォノン散乱挙動に関して多くの微視的知見が得られた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Computational Materials Science
巻: 204 ページ: 111137~111137
10.1016/j.commatsci.2021.111137
Applied Physics Letters
巻: 119 ページ: 231604~231604
10.1063/5.0075854
Scripta Materialia
巻: 202 ページ: 113991~113991
10.1016/j.scriptamat.2021.113991
材料の科学と工学
巻: 58 ページ: 216~219
http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/msp8/index_j.html
http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/msp8/members/fujii/