研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05208
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
芹澤 武 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30284904)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セルロース / 分子集合体 / 水和構造 / バイオ機能 / 水圏機能材料 |
研究実績の概要 |
「セルロース系分子集合体の水和構造解析とバイオ機能の評価」を実施した。まず、無修飾のセロオリゴ糖または還元末端にアルキル基をもつセロオリゴ糖で構成される、表面構造が異なる分子集合体を調製した。次に、集合体の水和構造を示差走査熱量測定により解析した。水和水には0 ℃で融解する「自由水」、0 ℃以下で凍結・融解する「中間水」、0 ℃以下で凍結しない「不凍水」の3種類が提唱されており、中でも、中間水が材料の生体親和性と密接に関係していることが知られている。そこで本研究においてもこの中間水に着目したところ、無修飾セロオリゴ糖からなる集合体がアルキル化セロオリゴ糖からなる集合体に比べて、より多くの中間水をもつことが分かった。さらに、無修飾セロオリゴ糖からなる集合体がより多くの飽和含水量をもつことも分かった。ペレット状に成形した固体状集合体の静的接触角を水滴を用いて測定した結果、無修飾セロオリゴ糖からなる集合体の値がより低かったことから、飽和含水量の違いは集合体の親疎水性を反映していることが示唆された。また、赤外分光法による水和構造解析について検討したところ、集合体表面付近の水和水に由来すると考えられる吸収スペクトルを検出することができた。一方で、タンパク質吸着性について検討したところ、無修飾セロオリゴ糖からなる集合体にはタンパク質がほとんど吸着しないのに対し、所定のアルキル鎖長をもつ集合体にはタンパク質が吸着することが分かった。このようにセルロース系分子集合体の水和構造とバイオ機能との相関に関する基礎知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
示差走査熱量測定法や赤外分光法によりセルロース系分子集合体の水和構造が解析可能であることや、集合体を構成するセルロースの分子構造の違いにより水和構造ならびにバイオ機能が異なることなどについて、おおむね当初の計画どおりに実施、解明できていることから、このように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは議論を単純化するために、示差走査熱量測定や赤外分光測定の際の水溶媒を超純水としていたが、応用する際により意味のある知見を得るために、今後は無機塩等を含む緩衝液を用いて検討する。また、水和構造を解析する他の手法についても検討し、水和構造についてのより多面的な知見を収集する。機能については、タンパク質吸着などの基盤的な特性評価にとどまらずに、バイオセンシング・診断材料、薬物輸送材料、細胞培養添加剤などの構築にも展開する。
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