研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05211
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川村 出 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20452047)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチド / 水 / 自己集合 / 固体NMR |
研究実績の概要 |
本研究課題では様々な機能性を発現するペプチド分子集合体において、固体核磁気共鳴分光法(固体NMR)によって水分子の役割を明らかにする研究を推進する。初年度はペプチド分子集合体のモデル系として、アクリドン発色団を有するジペプチドおよびトリペプチドの化学合成を行った。その中で、1残基目にアクリドン発色団を持つジペプチドにおいて室温・pH7.4の水系緩衝液中で青色発光性自己組織化ハイドロゲルの形成に成功した。高温-室温においてゾル-ゲル転移する可逆的な応答性についても確認した。ペプチドと水だけで形成したハイドロゲルは生体適合性ゲルとして様々な用途への利用が期待できる。さらに、ハイドロゲル中の水分子の動的挙動について、1H 固体マジック角回転NMR測定によって、温度変化のスペクトルを記録した。その結果、結合水・自由水・中間水の区別など、水分子とペプチドとの相互作用に関する描像の一端を明らかにした。その他にもいくつかのペプチドを合成し、ハイドロゲル形成できるか探索することで、配列情報から水分子との相互作用を調査した。 サンプルに対してマイクロ波を照射しながらNMR信号の検出が可能なIn-situマイクロ波照射NMRを用いて、エタノール-ヘキサン混合系の熱的-非熱的効果について明らかにし、J. Phys. Chem. Bに論文発表した。このシステムは今後、水系のサンプルについても適用可能であるため、適切なサンプルを選定して、測定を実行していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、ペプチド分子集合体における水の構造解析を目指しており、初年度に計画していた蛍光発色団を有するジペプチドの合成、ハイドロゲル形成条件の確立を達成したため、研究進捗状況は順調に進展している。 また、極性分子のマイクロ波による影響を測定できるIn-situマイクロ波NMRによってエタノールの特異的な挙動を観測した。今後、水系溶媒への展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド分子集合体における結合水、自由水、中間水を含めた水分子の構造の解明に関する研究を固体NMR分光法を駆使して推進する。領域内で形成した共同研究について、固体NMR分光法による解析を実施する。
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