研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05213
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
桶葭 興資 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50557577)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 配向 / 多糖 / 水蒸気 / 自己組織化 / アクチュエータ |
研究実績の概要 |
環境・エネルギー問題が叫ばれる一方、水圏の生体組織が多様なエネルギー変換を達成していることに鑑みれば、水を活用したエネルギー循環型社会への移行は必須である。例えば、ソフトでウエットな高分子ハイドロゲルは人工軟骨や細胞足場など医用材料をはじめ、生体機能の超越が有望視されている。同時に、刺激応答性高分子を用いたケモメカニカルゲルや湿度応答する合成高分子フィルムなど、しなやかに運動するアクチュエータの研究も注目されてきた。これに対し、水圏生体物質であり、多糖をエネルギー変換の場とする研究は発展途上にある。そこで本研究では、様々な特性を持つ各種多糖に対して一軸配向膜を作製し、水蒸気駆動型の運動素子をはじめ、エネルギー変換材料の構築を進めている。以下に主要な研究実績の内容を記す。 1. 水滴の接近に伴って瞬時に屈曲変形する多糖膜が得られた。膜中の多糖ファイバーの蛇行構造が湿度変化を感知してバネのように伸び縮みすることで、ミリ秒スケールの高速で可逆的に屈曲変形する「湿度応答型のアクチュエータ」が得られた。この内容は、査読付学術雑誌に掲載されて表紙採択に至り、研究成果についてプレスリリースを行った。 2. 水中の多糖形態を制御することで、毛管長より長い平行板ギャップ間から配向した多糖膜が得ることに成功した。これまで高分子膜の幅が1 mm程度であったが、8 mm程度までに拡張することができた。 3. 水の蒸発界面における多糖の配向化、および配向膜の形成には蒸発界面の表面張力の影響が著しく大きいことが示唆され、広範な濡れ性の基板間ギャップにおいて多糖が配向化することが解明された。 また、本研究に関わる学会発表は、国際学会と国内学会含め5件行っており、活発な議論を通して遂行されている。これを基に本研究の多角的なアプローチが計画できており、二年目の研究を遂行するにあたり重要なステップを踏んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の主な研究業績として、論文発表は査読付学術雑誌5件で、本研究の重要な内容を公表するに至った。特に、査読付原著論文1件では表紙採択に至り、また、レビュー論文2件を発表したことから、順調に進んでいると言える。さらに、本研究の論文発表に伴ったプレスリリースや海外メディア掲載等を通して、今後、より一層の注目度が高まる新学術分野の開拓が期待される。また、オンライン国際会議を含めた学会発表2件、および国内学会発表3件を通して活発な議論を重ねており、現在も順調に進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
領域内研究者らと共同研究を進めることで、多角的にナノ・ミクロ構造を詳細に解析し、本研究を深化させる段階である。特に、水中における多糖の階層的形態を明らかにすることで、水の蒸発や吸湿に関する評価を進める。また、多糖の側鎖による違いや静電相互作用を考慮して、水蒸気駆動型のエネルギー変換素子にとって有用な構造や形態を系統的に評価する。これらの研究内容は随時、国内外の学会発表、および査読付論文発表を通して進める予定である。
|