研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05217
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 潮解 / 吸湿 / ブロック共重合体 / アゾベンゼン / 光配向 / ポリシロキサン / ミクロ相分離構造 / 自己集合 |
研究実績の概要 |
吸湿基および光応答基をもつ、炭素骨格を主鎖にもつ両親媒性ブロック共重合体を合成した。この共重合体は両ブロックの体積分率比に応じてラメラ状あるいはシリンダー状ミクロ相分離構造を形成した。また、加湿によって試料重量が増大し、吸湿性も有していた。スピンコート膜を調製しラメラ状ミクロ相分離構造の配向を評価したところ、50nm以上の膜厚のときは基板に平行および水平な二種類の配向状態が混在することが明らかとなった。50nm未満の膜厚にすることで基板に垂直方向に配向したラメラ構造のみになったことから、50nm以上の膜厚では深さ方向で異なるラメラ構造が分離しており、基板側に垂直配向、自由界面側に平行配向のラメラ構造が存在することまでわかった。ミクロ相分離構造の繰り返し周期がこの配向挙動に関連していると考えている。 研究を進める中で直鎖状ポリシロキサンが湿度に応じて1億倍の弾性率変化を示すという予期せぬ結果を得た。通常、直鎖状ポリシロキサンのガラス転移温度は0度以下であり、室温では粘調体としてふるまう。そのため、直鎖状ポリシロキサンはオイルやグリース等の柔軟な材料の主成分として利用される。今回見出した現象は、直鎖状ポリシロキサンでありながらPTFEのような汎用プラスチックに匹敵する弾性率を示すという学術的に興味深いものである。さらに、この直鎖状ポリシロキサンは加湿によってナノメートルオーダーの周期構造が発現することも見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は吸湿基と光応答基をもつ両親媒性ブロック共重合体の合成と薄膜化までを実施した。マクロイニシエータによって二段階目の重合の進行度が異なり、当初計画していた合成スキームから変更した部分もあるが、最終的には計画通りのスケジュールで研究を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は両親媒性ブロック共重合体ミクロ相分離構造の光配向制御を試みる。その後、調湿測定も組み合わせることで、ナノスケールの水圏を光で自在に操作するシステムを開発する。また、主鎖骨格やモノマー配列の異なるポリマーであっても湿度に応じて自己集合構造が形成されることを見出しており、2021年度はナノ水圏形成ポリマーのライブラリー化も視野に入れた研究を遂行する。
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